ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」が紡ぐ物語~情熱が人を動かし、商品が生まれ、消費者に~ 後編


まず、これまでの契約書の雛形が使えません。農協経由で出荷する契約書にはタンパク含有率の記載欄がなく、事前に販売価格の取り決めもできません。これまでの販売価格を下回るのではないかという不安に苛まれました。次に、農協や全農に協力してもらえるのか。まず全農と生産者、普及センターで話し合い、協力を約束していただきました。次に、地元の農協に協力を仰いだところ、JA茨城むつみに協力いただけることになり、無事に出荷ルートが確保できました。
――ほかにも問題が?
油谷 農産物検査は、それまで全量をソメノグリーンファームで行なっていましたが、農協の検査員に変わります。検査は人の目によるものなので、評価基準を一定にできるかという心配がありました。もう一つの問題は、農産物検査後の保管場所です。50tの小麦は移動するだけで費用が発生するので、出荷までの間、農協内でほかの麦と混同しない倉庫を確保していただく必要がありました。栽培研究会としても、不測の事態に備えて、フレコンごとにばらつきがないようにタンパク含有率が13~14%に収まる確かなものを事前に分けるなど、現場では正解のわからない作業が続きました。
――初年度は大変でしたね。
油谷 はい。昭和産業との取引も3年目からは、農協を通さない直接取引に変更されています。大手の製粉会社にしてみれば、小さな産地と契約を結ぶこと自体が初めてで、信用を得にくかったのだと思います。
――販売組織の立ち上げは、その辺りに関わるのですか?
油谷 昭和産業もそうですが、ほかの製粉会社からもお声がけいただき、19年産から急に契約量が増えました。生産者個人のやり取りでは契約が煩雑になり、小麦の均質化の面でも販売を一元化する必要に迫られました。中小企業診断士の先生にいろいろ相談するなかで一人一票を持つ有限責任事業組合(LLP)を立ち上げました。
株式会社にしなかった理由は、「生産者が販売を誰かに委託して自分は作るだけで良くなると、結局いままでと同じになってしまうのではないかという心配がある。ゆめかおりを作っている一人一人が販売に携わるということがこの取り組みでは大切なんだと思う」と染野さんがおっしゃるところによります。
――さて、セブン-イレブンのパンの話はどうなりましたか?
油谷 20年9月に鳥山さんから「決まったよ」と聞きました。鳥山さんが実現に向けていろいろと働きかけていたことも、使うと宣言から3年以上が経過して実現が難しいこともわかってきていたので、「いつできるんですか?」と聞ける状況ではありませんでした。それだけに実現できたことは、私としても嬉しかったです。

関連記事

powered by weblio