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特集

茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」が紡ぐ物語~情熱が人を動かし、商品が生まれ、消費者に~ 後編



【セブン-イレブンにパンが並ぶまでの葛藤】

――油谷さんが着任した時の状況はどうでしたか?
油谷 担当を引き継いだ17年産のゆめかおりの収穫量は330tでした。現実的にはその量を売り切るのがやっとで、1000tという目標は夢のまた夢だと思っていました。年度早々に圃場調査が始まりましたが、その年の6月に「新麦コレクション」でパン屋さんたちがゆめかおりの圃場を見学に来るということで、イベントを開催するお手伝いをしました。
伊藤 「新麦コレクション」は、パンラボの池田浩明さんが国産小麦に関心の高いパン屋さんと一緒に立ち上げたNPO法人で、その年に収穫した小麦を使ってパンを焼いて味わうプロジェクトです。北海道に行かなくても茨城にもパン用小麦の圃場があるということで、見学を受け入れるところまでは、私が調整していました。
油谷 このイベントの準備をしているときに県庁から、地域の食材に興味を持っている方として紹介されたのが、リバティーフーズ(株)の鳥山雅庸社長でした。直接電話をかけてお誘いしたときは乗り気でなかったのですが、懇意にされている千葉県のパン屋さんに誘われて参加してくださったんです。イベント当日、染野さんと鳥山さんがお会いになりました。
――運命の出会いですね!
油谷 はい。この日、鳥山さんから「セブン-イレブンに並ぶ焼きたてパンに、ゆめかおりを使います」という宣言が飛び出しました。そこから一気に話が膨らんだように思います。
――それでも、具体化するのは、大変だったのでは?
油谷 鳥山さんがセブン-イレブンのパンで使うためには、昭和産業(株)で製粉しなければならないということで、同社が関わっている学校給食に栽培研究会のゆめかおりを提案する件が持ち上がりました。染野さんと鳥山さんと県庁の関係部署に話をしに行きましたが、最低でも300tの供給量が必要と言われ、当時は相手にしてもらえませんでした。突破口が見えないなかでも、鳥山さんがいろいろ考えてくださって、最初のゆめかおりの契約は、19年産の50tに決まりました。この50tを出荷するまでがとにかく大変で……、栽培研究会で出荷を担当する片岡孝介さんは相当ご苦労されたと思います。
――ネックになったのは?
油谷 千葉製粉とはタンパク含有率13~14%の小麦を事前に価格を決めて直接取引する契約で順調に出荷量を増やしてきたのですが、昭和産業の要望は、一般流通の麦と同じように、地域の農協、全農を通して出荷してほしいということでした。

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