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19年10月に開催された国内最大の農業生産資材の展示商談会「農業Week 2019」に、同社は日本の代理店とともにブースを出していた。アモイの本社から出張してきた日本担当の中国人社員がいて、高級レストラン向けに食べられる花、エディブルフラワーの栽培を増やしていると説明してくれた。
同社は、もともと他の植物工場と同様、レタス栽培から事業を起こしたものの、より利益率の高い作物に手を広げている。実際、SNSにアップされる写真には、バジルやアイスプラントのような葉物野菜だけでなく、葉に独特な網目模様を持ち、観葉植物として好まれるジュエルオーキッド(宝石蘭)や、香辛料の原料になる花のサフラン、もはや何なのか筆者にはさっぱり分からない植物まで、さまざまな植物が写っている。
2016年に本格稼働の国家的プロジェクト
同社は、LED照明や栽培用の棚、統合環境制御(光や温度、湿度、二酸化炭素濃度、養液などさまざまな環境因子を統合的に制御すること)のためのシステムなどを販売している。商業栽培向けはもちろん、生育速度を速めるLED照明は研究機関でも使われるそうだ。水稲、トウモロコシ、ダイズ、小麦といった大量の光を必要とする作物の育種期間を短くするという。
提供するソリューションの一つに、栽培の自動化がある。同社のホームページに掲載の動画(写真上)では、播種から間引き、植え替えや収穫後のパレットの洗浄などをロボットが行なうさまが紹介されている。定植前の間引き作業を担うロボットのアームには、AIが搭載されているそうだ。
「播種から収穫までの作業の自動化ができます。収穫時は人が品質の検査をするので、生産の90%以上は自動化できます。私たちよりも高いレベルの自動化のシステムをまだ見たことがないです」(中国人社員)
中国で流通の川上から川下まで投資を拡大し、地位を高めると同時に、海外に植物工場のシステムと技術面のフォローも含めたパッケージを輸出すると掲げている。そんな同社の中国名は、福建省中科生物だ。「中科」は、科学技術分野での最高諮問機関である中国科学院のこと。同社は中国科学院植物研究所とLED光の技術を持つ福建三安グループが2015年に立ち上げた合弁会社なのだ。設立には4年をかけ、総投資額は70億元(1275億円)に上ったという。
同社の歩みは、中国の植物工場拡大の路線と軌を一にする。習近平国家主席が北京で人工光型植物工場を視察して大々的に報じられ、国として植物工場を重視すると打ち出したのが16年。その2カ月後にサナン・バイオの植物工場が本格稼働した。
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山口亮子 ヤマグチリョウコ
(株)ウロ
代表取締役
ジャーナリスト。2010年、京都大文卒。13年、中国・北京大歴史学系大学院修了。時事通信社を経てフリーになり、農業、地域活性化、中国について執筆。⑭ウロ代表取締役。農業や地域のPRを目的としたパンフレットや広告、雑誌などの企画・制作のほか、ツアーやセミナーの運営を手がける。著書に『図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(共著)がある。
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