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スマート・テロワールの実践者たち

シビック・アグリカルチャー「食と農の自給圏」は可能か?

地域の農業経営者の皆様に、以下のような不安はないだろうか? 「自分は意欲的な営農で元気に食べているが、周囲ではどんどん子どもが減り、空き家が増えている。いい農地があっても、受け継ぐ者がいない。この先はいったいどうなっていくのだろう」と。
農村には本来、長年守り伝えられて来た農地がある。食料やエネルギーを自給して、循環再生しながら継続して行ける可能性がある。そうした農村のポテンシャルを引き出し、自分も次世代に何かを残していくことは、可能ではないだろうか。そうした、農業を核にした地域社会の再生ができるとするなら、それを実現する主体は誰なのか。
農村の存続を模索するすべての皆様に、以下では、米国発の「シビック・アグリカルチャー」という運動をご紹介したい。その上で、なぜ日本では「農業」の再生が、「農村」の再生になかなかつながっていかないのか、この運動の紹介者である獨協大学の北野収教授のナビゲーションにより、根源的な問題を解き明かしていこう。
北野教授は、農林水産省の官房調査専門官として、国際協力や農村地域活性化などに携わった後、現在は同学の交流文化学科で、開発や食文化に関する科目の教鞭を執っている。外部からのお金や物資の援助ではなく、「地の人々の主体性と気付き」がもたらすのが「内発的発展」だが、そうした気づきを育む方策が研究テーマだ。
カルビー(株)の経営者だった故・松尾雅彦氏は、2014年に『スマート・テロワール~農村消滅論からの大転換』を刊行したが、これは、北野教授が12年に邦訳し刊行した、トーマス・ライソン著『シビック・アグリカルチャー』(農林統計出版)から、深い示唆を得てのことだった。松尾氏はその後に、(一社)スマート・テロワール協会を設立するのだが、その際には、会の名称を「シビック・アグリカルチャー協会」とできないかとも考え、北野教授には協会の顧問にご就任いただいた経緯がある。
さて、シビック・アグリカルチャーとは何だろうか。「食料市民」たちが「食料主権」を行使し、地産地消の地域自給圏(「食料自治空間」)を形成するとの運動だ。米国で始まって世界に広がっており、中国においてすら、これを実践するコミュニティが500以上あるという。しかし教授のお話を伺っていると、日本ではなかなかその本質が理解されがたい面もあるようだ。どういうことなのか。

コミュニティに根差すシビック・アグリカルチャー

シビック・アグリカルチャーの中核を成すのは、CSA(Community-
Supported Agriculture=地域支援型農業)だ。小規模家族経営農業者に、加工業者、レストラン、弱者などへの食料支援を行なう社会事業者、学校、一般消費者などの加わったコミュニティが、グローバル資本に支配されない小さな食の循環システムを構築する試みである。

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