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スマート・テロワールの実践者たち

農山村集落から始まる再生「地元」から日本と世界を創り直す

いわゆる「過疎地」にも、成り立っている専業農家はたくさんある。しかし地域全体で人口の減少が止まらなければ、いずれ学校が消え病院が消え店が消えて、農業は成り立っても暮らしは成り立たなくなる。つまり、農業が再生するだけでは地域は再生しない。 工業も同じで、たとえばフル稼働する最先端工場の並ぶ北九州市で人口がどんどん減っているのは、これと同根の現象だ。
地方だけの話ではない。東京都でさえも、700万軒以上ある戸建てや集合住宅の、なんと9軒に1軒が空き家である。数の多い団塊世代が70代を超え、彼らが都会で買った家も、興した事業も、承継者不足になっている。
戦後の日本がやってきたのは、人や地域の、その場限りの「使い捨て」だったのではないか。あなたの暮らしや営みも、あなたが死ねばいずれ忘れ去られてしまうのではないか。今はもう亡くなられた方々が、田んぼや水路や橋や木々を長年の営みで守り伝えて来た「地元」。その価値にもう一度気付き、自分も次世代に何かを残していくことは、できないのだろうか。
この問題に正面から向き合っているのが、持続可能な地域社会総合研究所の所長、藤山先生だ。島根県益田市の川べりの伝統的家屋に住み、赤い石見瓦の美しい海辺の集落にオフィスを構え、地べたの声に寄り添いつつ、集落単位で、人と所得とエネルギーの循環を紡ぎ直そうとしている。
緻密な地域経済循環分析に基づき、住民とのワークショップを重ね、具体的な動きを起こしていくその姿を見れば、あなたも感じるはずだ。「もうダメかと思っていたけれど、このような知恵と手法があったのか」と。
1959年生まれの藤山先生は、一橋大学経済学部を卒業後に広島県にJターンし、広島大学で博士号を取得。島根県の中山間地・飯南町に設置された中山間地域研究センターに勤務などの後、2017年に故郷の島根県益田市に、一般社団法人として研究所を設立した。現在は若いスタッフとともに日々、全国各地の農山村の再生に向けて、現場支援を続けている。
「田園回帰1%戦略」「循環型経済をつくる」「小さな拠点をつくる」など、一連の著書は、農山村地域再生のバイブルだ。地区の人口やお金の流れの詳細な分析をベースに、僅かな数のUIターンの毎年の受け入れと、地域内の循環再生の再構築で、「過疎」とされる集落が持続可能になることを示した。近著『日本はどこで間違えたのか』では、戦後の大都市への人口集中策が、結局は壮大な無為に終わってしまうであろうことに、警鐘を鳴らしている。

田園回帰の流れが起き始めた

「果てしなく広がる大都市圏。毎日の長時間通勤。そびえ立つビルやタワーマンション。そこで、日々暮らす人々の思いは、周りや次世代の人々に伝わっていくのだろうか?」と藤山先生は問う。

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