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新・農業経営者ルポ

ずっと向き合ってきた「集落」とこれからも付き合っていく

国から言われる前から向き合ってきた「集落」がある

 そんな島田さんが今悩みを抱えている。悩みのタネは、07年度から始まる品目横断的経営安定対策に伴う集落組織づくりである。

 島田さんの住む集落、宇津野新田は約50戸の農家で成り立っている。日本一のコメどころとも言われる魚沼ではあるが、ご多分漏れず高齢化は進んでいる。集落で2番目に広い耕作面積を持ち、宇津野新田稲作生産組合長をしている島田さんのもとに、JAや行政から「集落営農組織を立ち上げてはどうか」という誘いが来ないはずがない。独自型の稲作経営をする農家が比較的多いなかにあって、島田さんは3人の農家とともに協同の育苗施設も運営している。JAや行政の考える理想的な集落組織のリーダーとも言える。

 実際のところ、JAや行政から明確な誘いがあるわけではないが、「生産組合をスライドさせて集落営農組織を作ってはどうか」、「(集落営農組織ができたら)リーダーとしてやってもらえないか」と持ち込まれるのは時間の問題だろう。

 集落に背を向けては生きることはできない――これは、島田さんの信条である。

 「水や道路を共同利用する土地利用型農業を続けていくためにも、家族が何代にもわたって豊かに暮らしていくためにも集落はなくてはならない」と話す。子供のころから、「集落では皆が協力していかなければならんよ」と徹底的にたたき込まれ、体の隅々にまで身に染み付いている。

 そうした思いから、作れば作るだけ売れていく産地にあっても、転作には100%協力してきた。その一方で稲作所得基盤確保対策、担い手経営安定対策といった自らの拠出金を伴うような補てん制度にはいっさい参加してこなかった。地域の輪にかかわる部分は協力するが、周りに迷惑がかからない部分については、国の指示など受けたくない。今回、国から「集落」、「集落」と言われる以前から、島田さんを含む農業経営者の多くは「集落」と正面から向き合って生きてきたのだ。


経営的な配慮の欠如とJAの関与拡大

 ところが、品目横断経営安定対策の担い手として組み込まれた「集落」は、国の要件を満たすかどうかだけを重視したものであり、農業経営者が向き合ってきた「集落」とは異なる。本誌でも、個別経営者が集落営農組織のリーダー役として請われていること、リーダーを引き受けてしまうと、その経営者が集落を背負うことになり、最後には集落とともに共倒れしてしまうなどと警鐘を鳴らしているが、島田さんも「まったくそのとおりだ」と言う。

 島田さんが、国の考えている集落組織に無理があると考える理由は大きく分けて二つある。

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