ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

ずっと向き合ってきた「集落」とこれからも付き合っていく

 消費者にコメを直販するようになったのは80年ころからだ。都会に出て行った島田さんの弟にコメを送ったところ、知人・友人に広まり、「送ってくれないか」と注文を受けるようになった。

 「営業は苦手」と言う島田さん。自分から売り込みに出るより、今買ってくれるお客さんの信頼を裏切らないコメ作りに専念したいと考えている。固定客は10人に満たないという。しかし、人と話をするのは好きな方。それが幸いして新規の顧客が生まれることもあるという。

 現在、長男の徳敏さん(30)が後継ぎとして一緒に働いているが、「ほかにもまだ3人の子供がいるんで…」と島田さんは冬の間、スキー場の送迎バスの運転手をしている。バスに乗ったお客さんと会話が弾むこともしばしばだという。つい最近も、島田さんが稲作農家だということを知った乗客が、「コメを食べてみたい」と注文をしてくれるようになった。

 また、お客さんがお客さんを紹介してくれるということも多い。固定客で、「この人たちに5kgずつ送ってください」と数人分のリストとともに注文をしてくれる人がいる。すると今度は送られた人から注文が入る。

 就農したころは、機械に乗るのが好きで自分が作業を終えた田んぼを眺めるのが「農業のおもしろい点」だと思っていたが、今ではお客さんとのやりとりが、「いちばんの喜び」だと微笑む。自己完結型の農業の原動力は、そこにあるのだろう。


国の政策より重いものとは

 魚沼コシのように高値で売れるコメ産地には補助金などいらないと島田さんは思っている。「そのかわり、国内自給率が低い作物については、集中的に補助金を出すべき。一方、担い手支援から漏れる地域については、自然環境を守っていくという視点から補助金は支給されるべき」。島田さんは、こうした現場の意見が政策に反映されず、相変わらず全国一律の政策しかとろうとしない国にいら立ちを感じている。ましてや、集落を守るという大義名分のもとに、生産者たちの努力が報われなくなるような仕組みが出来上がってしまえば、産地として発展はおろか、衰退していくばかりだという危機感を感じている。

 取材の途中で、奥さんの由美子さんがカレーライスをご馳走してくれた。ご飯はもちろん島田さんや奥さんが作ったものだ。私の財布ではとても買えない魚沼コシ。カレーの味は申し分なかったのだが、カレーライスにするのがもったいないほどおいしかった。「自分の作るコメが一番おいしいと思いますか?」と聞くと、「そんなことを思っていたら、今ごろ自滅して、消えているよ」と一蹴された。

関連記事

powered by weblio