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モロッコからの輸送に用船されたのは、詳細は確認できなかったが、いずれも3万t級のバルク船らしい。ほぼ満載してくるとみて、単純に約3.5万としておいた。うちリン鉱石の輸入も含まれている。これが第2船、第3船、どの船で運ばれてくるか。肥料業界に取材してもつかめなかった。
ただ第1船は、商社調達分との相乗り便という情報だ。その内訳は、肥料業界では、「ホクレンの注文を受けて全農が調達した数量は、MAPとDAPでワン・ハッチ、ツー・ハッチという数量らしいよ。全量が全農分でないことは確かだ」という情報が流れている。
ハッチとは、貨物船の貨物倉のことのようだ。「ワン・ハッチ」とは、そのうちの1貨物倉ということになる。その表現から、ホクレン向けの積荷は、せいぜい数千tということなのか。第1船には、思ったよりホクレン分が少ないことは驚くべきだ。
従って、3隻の積み荷のうち商社分とリン鉱石分を差し引いたものが、ホクレンの春肥に向けての調達分になる。そこからホクレン調達分のMAPとDAPは、5万t台という推測も成り立つ。これでは7万tの不足分をカバーすることはできない。
次に大きな問題は、第2船や第3船が北海道の港に着く時期だ。第1船は十分に間に合う。1月28日現在、第2船は1月24日頃に現地を出港したという情報に接した。第3船も1月末に出港予定らしい。いずれにせよ、この両船が春肥生産の命運を握っている。
1月末に出港予定の第3船が、仮に同30日に出港すれば、最短のスエズ運河経由のコースを時速13ノットの速度で進むという条件で、日本の港へ到着するのは、3月6日以降だ。国内で小型船への積み替え作業のため途中寄港するようなら、北海道への到着はさらに遅れ、同10日以降ということになる。
北海道で荷揚げが予想されるのは、苫小牧、十勝、釧路の各港だ。そこで問題となるのは、各港での荷役能力。ホクレン肥料工場が近い十勝港では、可動式の小型ホッパーしかない。これだと積み下ろし能力は、1日あたりせいぜい千t程度だ。モロッコからのバルク船が、そのまま入港するようなことになれば、満載の原料を積み下ろすには、最低でも20日はかかる計算。
従って第2船や第3船も、北海道への輸送を急ぐため、雪の影響が少ない西日本のどこかの港でトランシップ、つまり内航に使う複数の小型バルク船への積み替え作業があるかもしれない。そうなれば、北海道の港でほぼ同じ時期に2隻分の原料を荷揚げすることになるので、どの港でも積み下ろし作業はかなり混乱するだろう。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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