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人生・農業リセット再出発

伝統と信頼

Visiting old、Learn new……温故知新、古い伝統の中に斬新な発見。
両国国技館で大相撲初場所を観戦した。招待席「1-5」は向こう正面最前列5番で行司と審判親方に挟まれる位置、NHK放送で画面中央に映る超特等席だった。座布団に座ると力士の取り組みが始まり、鼻息が聞こえ、立ち合いの激しいガチンコは頭蓋骨が割れるほどの音がして汗しぶきが飛んでくる。力士が土俵からドーンと崩れ落ちてくる。危ない!と身構えるが、審判親方ものけ反りながら私に巨体を傾けてきたから堪らない。眼鏡がグシャッと潰れた。
力士のチョンマゲや仕草に興味が湧く。二階席まで1,000人以上の観客がいるのに場内は咳一つ聞こえず、どよめきと拍手の怒涛はあっても、コロナ対策で声援は無し。アナウンスと行司の声以外は、力士も静寂が延々と続く。激しい立ち合いと声ひとつ立てない“静と動”。勝ち名乗りを受ける時も無表情のまま、賞金も手で“心”の字を描いて頂く作法。ここは自己主張を表に出してはいけない世界。起源は712年の『古事記』に書かれている「神様たちの力くらべ」神話にある。相撲は農作物収穫を占う宮廷儀式で古代から続き、鎌倉時代には武士の戦闘訓練として行なわれ、信長は相撲を好んで催して勝者を家臣に召し抱えた。江戸の平和時には歌舞伎と並んで庶民の娯楽になった。土俵入り、番付表、化粧まわし、チョンマゲ、着物、取り組み……時が止まっているかのように1500年も続く伝統の大相撲。華やかな様式美と格式ある礼法を重んじ、正々堂々と技と力を競い合い、所作すべてに神に捧げる神聖さが込められ、土俵入りは神様に奉納する儀式。四股を踏むのは土中の邪気を追い出し、脇を挙げるのは武器を隠し持っていない丸腰を示す。力士の振りまく清め塩は、1日に45kg、15日間で650kg、米俵11俵分。結びの一番の勝者に代わり、作法を心得た者が行なう儀式が勝者の舞である「弓取り式」。静と動の神事は、まさに日本文化の粋を極めたものだと感動した。

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