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新・農業経営者ルポ

主婦目線、母親目線で届ける平地平飼い卵と極上スイーツ

岡山県で平地平飼いをする養鶏場の(株)卵娘庵(らんこあん)の代表取締役、藤井美佐(56)。「鶏ファースト」を掲げ、鶏舎を学校に、約7500羽の鶏を社員に例えながら、わが子のように慈しみ、飼育する。主婦として、母親としての経験やアイディアを生かした発信力で、子育て世代の共感を呼び、卵娘庵のファンを増やしながら経営を続けている。 文・写真/筑波君枝、写真提供/卵娘庵

平飼い鶏舎に“入学”してくる生後100日齢の女子と男子

岡山県井原市の山間部にある卵娘庵の鶏舎に、新しい雛がやってくる(入雛)と入学式が行なわれる。入学してくるのは生後100~120日齢の大雛。雛は卵を産む巣箱を通って鶏舎に入っていく。これが入学式だ。雌は女子社員、雄は男子社員と呼ばれる。
鶏舎は女子社員ばかりの女子校と、男子社員が1割ほど混ざる共学とに分かれ、共学鶏舎の卵は有精卵として販売されている。最初は農場スタッフによるオリエンテーションが行なわれ、止まり木など高い場所に上る練習をさせる。
女子社員たちは130日齢くらいから卵を産み始めるが、巣箱で産卵することもしっかりと指導する必要がある。巣箱以外で産み落とした卵は、巣外卵として加工用に回さなければならないためだ。卵を産みそうな様子を見せると、「ここで産んじゃだめ」と巣箱に誘導するのだという。
産んだ卵を抱卵しようとする女子社員も時々いる。そんなとき、「あんたは最後まで温められんじゃろ」と話しかけながら取り返す。鶏と接しているとそんなひとり言が増え、子育てをしているような気持ちになると藤井は話す。

「愛情を込めて育てていますが、苦手なものは苦手です」

卵娘庵は「鶏ファースト」を掲げ、平地平飼いで約7500羽を飼育する養鶏場だ。鶏は、ビジネスパートナーであると同時に大切な子どもたちでもある。家畜の健康的な飼育方法を目指す、アニマルウェルフェアの考え方に基づいた養鶏を実践している。
鶏種は愛媛県産のボリスブラウン。殻色が均一な赤玉鶏だ。穏やかな性格で採卵鶏に向いている。開放鶏舎で太陽光をめいっぱい浴び、土を掘り、砂遊びさせながら健康に育てることがモットー。より自然に近い環境で育った鶏が産んだ新鮮な卵と、その卵で作った加工品を届けることが経営の使命だ。
共学鶏舎も卵を有精卵として売り出したのはここ数年のこと。当初は鶏のストレス軽減のために雄鶏を入れていた。

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