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新・農業経営者ルポ

主婦目線、母親目線で届ける平地平飼い卵と極上スイーツ



廃業か経営維持かの選択を迫られ、社長に

ところが、そのころ、養鶏場では深刻な問題が持ち上がっていた。鶏舎の老朽化やイノシシなどの獣害がひどく、このままでは経営を維持できないと廃業が検討されていたのだ。
「当時は経営にタッチしていなかったので、辞めなきゃいけないとは想像もしていませんでした。営業先で『売れているよ~』と声をかけられることも多くなり、いろいろな話も進んでいるときでしたからなおさら。しかも、自ら営業をして決めてきた話なので、『今さらやめられんよ』と言ったんです」
ではどうする?と話し合いを重ねた。「やるなら応援するよ」と多くの取引先が言ってくれたことにも背中を押され、加工部が独立する形で個人商店を立ち上げ、卵と鶏肉を全量買い上げて販売することになった。そしてその半年後、養鶏場と個人商店が一緒になる形で法人化し、(株)卵娘庵が設立された。2015年のことだった。
「夫は養鶏場の役員だったので、卵娘庵の社長を兼任することはできずに、結果的に私が社長になるしかありませんでした。そもそも嫁さんの手伝いだったはずなのに、『え? あたしが社長?』っていう気持ちでしたよ」
ただ夫は女性を中心とした部門を作る構想を、以前から練っていたという。卵娘庵の名前も夫からの提案で、法人化の前から考えていた。
「卵を産む娘の小屋という意味を込めたそうです。すぐに覚えてもらえますし、アルファベットで表記してもかわいいので気に入っています。なんて読むの?と聞かれることが多いのですが、そういった疑問から興味を持っていただけるのもいいなと思います」
社員は現在、事業部門を担当する夫と、養鶏場の農場長、GPセンター(卵の選別包装施設)、事務兼営業の4名。ほかにパートスタッフが直売所やカフェを含め15、6名常時いる。

空飛ぶ卵を産む鶏舎が壊滅的な被害に

祖父が経営していたころ、養鶏場ではケージで約3万羽を飼育していた。しかし、狭いケージの中で、卵を産ませるだけの養鶏に疑問を感じ、2005年ごろから鶏舎内を自由に歩き回れる平地平飼いへと変え、数を減らしていったそうだ。
現在は7500羽前後を飼育している。3000羽収容の鶏舎3棟で、1棟を2群に分けて飼育し、常に1500羽分のエリアを休ませながらローテーションしている。
この3棟に至るまでも紆余曲折があった。
養鶏場は山の農場と川の農場との2カ所に分かれ、それぞれ2棟、合計4棟あった。平飼いに切り替えてからは4棟で約9000羽を飼育していた。人里離れたところで鶏の楽園を作りたい。祖父にはそんな構想もあって選んだ場所だという。

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