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新・農業経営者ルポ

主婦目線、母親目線で届ける平地平飼い卵と極上スイーツ


山の農場は文字通り山の上にあり、川の農場は川を渡らないと行けない場所に立地していた。川の農場へは獣道のような道しかなく、車は使えない。エサや卵は川に設置されたゴンドラに載せて運んでいた。ゴンドラが卵を運ぶ様子から「空飛ぶ卵」と命名していたこともある。しかしここは採算を取るのが難しく、赤字農場とも呼ばれ、そう遠くない時期に辞めなければいけないと考えていたという。
そこに2018年7月、西日本豪雨が襲った。
ゴンドラが壊れ、2棟のうち1棟が壊滅的な被害を受けてしまった。幸い被害を受けた1棟は休んでいる時期で鶏がいなかったため、約4000羽の鶏は無事だった。しかし、ゴンドラが壊れ、スタッフが川を渡って農場に行くしか手立てがなく、充分な量のエサを与えることができなくなってしまった。
生き延びた4000羽は、卵を最も産む時期だった。しかし、暑さと豪雨の被害で、卵を産まなくなり、損害は大きかった。それでも鶏のために、いの一番に川の農場を修繕し、最後の1羽が出ていくまで面倒を見た後、川の農場は閉めることにした。

西日本豪雨災害によってもたらされた“改善”

その後、豪雨災害の補助金などを利用し、山の農場の空いていた土地
に3棟目を建て、飼育数も9000羽から7500羽に減らした。
「損害は大きかったのですが、災害によって気づかされたことも多く、経営の改善にもつながりました」
本当はもう1棟建てたいという思いも、数を減らすことへの抵抗もあった。しかし、7500羽に減らしたことで、経営そのものを見直すことができたためだ。
卵娘庵では豪雨災害までは、鶏を700日齢まで飼育していた。しかし、羽数を減らしたことを契機に、思い切って550日齢と短くした。すると、7500羽でも9000羽に近い生産量が確保できたという。これまでは産卵率が落ちた鶏舎に、かなりの数の産まなくなっていた鶏がいたにも関わらず、飼育し続けていたことがわかった。
「回転を速くしたことで、9000羽に近い生産量が確保でき、『なんだ! これでよかったんだ』と気づいたんです。それまでは2カ所で養鶏をしていたのを1カ所に集約したため、作業の効率もよくなりました。豪雨災害は本当に大変でしたが、それをきっかけに改善できたので、ありがたいと捉えようと思えました」
大きな養鶏場なら設備投資によって規模を拡大することで経営を安定させることができるだろう。しかし、小規模経営に同じことはできない。効率を上げ、卵の質を上げ、付加価値を付けていかない限り大手には勝てない。西日本豪雨の被害は、改めてそれを考えるきっかけとなった。

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