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子どもたちにどんな卵を食べさせたいですか?
取材中、藤井は何度も「発信」という言葉を口にした。
「大量生産ではないからこそ、積極的に発信していかないとダメだと思うんです」
物価の優等生ともいわれる卵は、現在でも、1パック10個で200円前後が一般的だ。対して卵娘庵の平飼い卵は、発売したばかりのころも6個で200円台、1個当たり40~50円だったため、なかなか売れなかった。平飼いやアニマルウェルフェアの認知度も低く、どう売るといいかがわからず、最初はとても苦労したという。
そこで力を入れてきたのが、藤井が先頭に立って顧客のニーズを模索しながら、「子どもや家族にどんな卵を食べさせたいですか?」と、主婦目線、母親目線で発信していくことだった。
エサは配合飼料と牡蠣殻が中心の自家配合。それを食べてストレスの少ない平飼いで育った鶏の卵は、濃厚で臭みがない。黄身にはコクがあり、弾力のある白身には甘みも感じられる。その安全性やおいしさをアピールしてきた。さらに主婦として母としての経験やアイディアを詰め込んだスイーツの開発・製造にも取り組んできた。
白身とシンプルな材料で作ったプリンが「しろぷり」、黄身で作った濃厚なプリンは「きいぷり」と、ネーミングもわかりやすくキャッチーだ。また、米粉のせんべい「ひよせん」は卵と米粉を使い、サクッとした食感と、子どもが食べてもポロポロとこぼれないことにこだわった。
「作っているのは私が子どもや孫に食べさせたいおやつ。だから、素材も吟味していますし、それが伝わるように発信しています」
味だけではなく、平飼い卵と一般的な卵ではどう違うのか。カロリーは5%、コレステロールは10%、脂質は25%、糖質は35%低いこと、さらにビタミンは高いことなど、卵の成分の含有の違いなども具体的な数値を盛り込んで発信している。それらが功を奏し、卵娘庵の卵の認知度が高まり、平飼いの価値に共感してくれる顧客も増えてきたことを実感している。
鶏の恵みである卵を野菜コーナーに置きたい
よりたくさんの人に卵娘庵の魅力を伝えようと、2020年11月にはJR早島駅前の早島町観光センター内に「こひよ」もオープンさせた。オープンにあたって想定した顧客層は35歳の子育て中のママたち。駅前という立地の良さと幼稚園バスの停留所が目の前にあることもあり、地域の女性たちに人気の店となっている。
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藤井美佐 フジイミサ
(株)卵娘庵
代表取締役
1965年、京都府生まれ。高校卒業後、ホテル勤務を経て、藤井浩太郎と結婚。2人の子どもに恵まれる。夫が継承した養鶏場の危機を救う形で(株)卵娘庵の代表取締役に。おかやま農業女子プロジェクトの副会長も務める。ちなみに、美佐の名の由来は12月25日生まれだからだという。
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