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特集

これからの水田転作を考えよう

本誌では水田農業イノベーションをテーマに掲げ、水田での畑作技術体系の導入を呼びかけてきた。同時に、交付金に依存した農業は不健康であり、供給過剰に転じた後も米価を維持する政策が日本農業の未来を安楽死に導いているのではないかと対象水田の厳格化を伴う見直しが進められているなか、これからの水田転作についてどう考えているだろうか。当事者と関係者に聞いてみた。 (まとめ/加藤祐子)

アンケート結果

【質問1:令和4年度の水田活用直接支払交付金の見直しをどう捉えていますか?】

[約半数の水田農業者が戸惑い・憤りを感じた「5年に一度水張り」と「飼料用米」への減額措置]

水田農業者が憤りを感じたおもな理由は、(1)飼料用米への支援政策が急転したこと、(2)「5年に一度水張り」の影響、(3)全国一律のルール化に伴う不公平感に対するものだった。一方で、いずれの回答を選んでも、対象水田の厳格化については、当然の措置だと捉えているようだ。

なかでも「5年に一度水張り」については、当事者でも田畑輪換(ブロップローテーション)が可能かどうかで意見が分かれた。地下水位が高い地域や中山間地などの条件不利地域でも、時間をかけて転作に挑戦してきた水田経営者たちは「これまで転作に協力し水田の畑地化を含め、畑作物を栽培しやすい環境を作ってきた人たちの努力が報われない(中略)安易に水張りをすると後作の転作作物が減収する可能性がある」、「基盤整備など国の政策に今まで協力し資金もかけている」、「転作地を畑作地のように使うことは難しい」と窮状を訴えている。

政策の見直しが米価の下落につながる可能性や、野菜価格の暴落を受けて「高収益作物」への転換を推し進める見直しに疑問を示す回答もあった。さらに、「担い手(農家)から交付金をもらっている地権者もおり、もっと切り込んでもよい」と府県の水田経営の実情を指摘する意見もあった。

また、同じ水田農業者からも「恒久的な措置でない」「備えを整えてきたから」といった静観する姿勢の声もある。水田以外の農業者からは「稲作ばかりに補助金がついて不愉快だ」「水田だけに重きが置かれている。米余りが深刻なのに輪作にかこつけて米生産者に有利な条件を残している」という厳しい回答も寄せられた。


【質問2:農林水産省の描く“将来的な水田農業ビジョン”を共有できていますか?】

[将来的な水田農業のビジョンを示していないと捉えている回答が7割以上に及んだ]

水田農業者に限らず、畑作・施設園芸・畜産等の農業者からも「全くビジョンが見えない」「あまりビジョンが見えていない」を選択した回答が目立った。「売れない商品を作り続けることに対して税金を投入し続けることは、国民(納税者)に対して説明ができない」という声も届いている。水田の維持と主食用米の需給調整という相容れない問題を抱えているのは事実である。政策転換期だと静観する向きもあるが、当事者である水田農業者とも明確な将来ビジョンを共有できていないようだ。

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