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特集

これからの水田転作を考えよう


「国土が狭く、農地面積も限られている我が国において、国民の主食である米の安定供給のほか、食料自給率・自給力の向上、多面的機能の維持強化等を図るためには、持続性に優れた生産装置である水田を最大限に有効活用することが重要」
水田活用の公益的な重要性が掲げられつつ、安い補助金で水田転作が実現されてきたことは、農業経営者にとって水田転作は公益的意義があるという自負を育んだ。
一方、国からみれば強制という手段は使わずに、より安い財政負担で米生産調整の誘導や水田の維持に成功してきた。批判的にいえば、水田活用の公益性を論拠に農業経営者を鼓舞しつつ、できるだけ少ない転作補助金を設定してきたのだ。これにより、農業経営者のやりがいを搾取するかのような形で国民全体が安価に水田転作の持つ公益的役割を享受できる仕組みが続けられてきたのである。

【米生産調整と水田活用をめぐる水田転作のジレンマ】

水田転作は米生産調整に貢献する。しかし、財政負担からみれば、水田転作した田に補助金を出すよりも、荒れ果てたり宅地になったりして無くなっていく田や、何も作らずに補助金も受け取らない田が増えていったほうが都合が良い。このジレンマは、主食用米の需要が低迷し、予算の制約があるなかで、より鮮明となってきた。
象徴的なのが08年に始まった「水田フル活用」だ。当初は自民党が示した用語だったが、民主党にも実質的に引き継がれた。水田フル活用はかつて、米生産調整と耕地面積の向上を意味していた。転作作物の本作化の推進によって、水田活用を増やし、結果的に米生産調整が実現される水田利用が構想されたのだ。しかし、14年度以降、耕地利用率の向上という意味合いは薄れていった。
たとえば、水田フル活用を象徴する飼料用米の場合、当初は麦・大豆に適さない田や地域での振興が掲げられていた。何も作られていない水田を減らし、耕地利用率を上げようとしたのである。だが、その後、飼料用米は主食用米からの作目転換、つまり、米生産調整を推進する作物としてPRされるようになった。
飼料用米には戦略作物助成だけみても10a当たり最大10万5000円が交付される。この補助金単価を実現できるのは、飼料用米より安い補助金単価による水田転作や、休耕田など転作補助金を受け取らずとも主食用米が作られていない田が存在するからだ。
「水田フル活用」といえば聞こえは良いが、14年度以降は、いかにして主食用米と競合できるような農作物を作り出すために補助金を講じるかという性格を強めた。現在の水田転作を支援する政策は、米生産調整としての水田転作を評価する意味合いの純粋さが再び増しているのである。

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