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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
パキスタン イスラーム教国での合法化と生産の推奨
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第52回 2022年04月04日
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聖典クルアーンで大麻は禁じられていない
同国北部はヘンプの原産地である中央アジアに接していることから、何世紀にも渡ってヘンプを栽培し、薬用、食用、宗教用に利用してきた。
7世紀の初め、預言者ムハンマドによって、アラビアでイスラーム教が成立し、根本聖典のクルアーン(コーラン)がまとめられた。クルアーンは、ムスリム(イスラーム教信者)にとって信仰の拠り所であると同時に生活の規範でもあり、イスラーム社会の根源となるものである。豚肉等の動物由来の食材を使わないハラール食品は、聖典を含めたイスラーム法で規定されている。
この聖典には、酒類による酩酊が禁止されているが、ハシシ(大麻)については明記されていない。ムハンマドが生きていた時代には、ハシシの酩酊があまり知られていなかったからと見られている。
イスラーム社会でハシシを広めたのは、イスラーム教のスーフィズム(神秘主義)といわれている。イスラーム法を学んだ法学者ウラマーの指導による形式的なものに反発する形で、10~11世紀に流行した。スーフィズムは、宗派としてではなく、多種多様な教団として今日まで存在し、ハシシを宗教上の儀式として扱ったことで、10世紀以降の読み物や詩歌にハシシの素晴らしさを伝える逸話が散見される。世界的に著名な千夜一夜物語(アラビアンナイト)にも複数箇所に登場することから、13世紀頃の庶民の生活に広まっていたと考えられている。
聖典のなかでハムル(khamr)は酒類を指していたが、法学者ウラマーは精神を麻痺させるあらゆる酩酊物質が入るものと解釈して、ハシシの宗教上の違法性を唱えるようになった。しかし、当時のムスリムの医師たちがハシシを喘息、淋病、便秘の治療や毒物の解毒剤に使っていたことや、ハシシが身体を蝕むことを客観的に証明できなかったことから、ハシシの普及を止める方法を見つけられなかった。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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