ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

パキスタン イスラーム教国での合法化と生産の推奨

パキスタン・イスラム共和国は、インドの西部に位置し、2億2000万人を有する世界第5位の人口大国だ。非常に若い世代が多く、人口の55%は35歳以下が占める。国土面積は日本の約2倍で、中央にインダス川が北から南へと縦断している。国土の大半が乾燥帯なため灌漑設備を伴う農業が盛んで、コメや小麦、トウモロコシなどの穀類、野菜の生産と畜産、綿花を中心とした繊維産業が主要産業である。第二次世界大戦後にインドとともに英国から独立し、ヒンズー教徒が多数派のインドと別れて、イスラーム教徒中心の国家となった。

聖典クルアーンで大麻は禁じられていない

同国北部はヘンプの原産地である中央アジアに接していることから、何世紀にも渡ってヘンプを栽培し、薬用、食用、宗教用に利用してきた。
7世紀の初め、預言者ムハンマドによって、アラビアでイスラーム教が成立し、根本聖典のクルアーン(コーラン)がまとめられた。クルアーンは、ムスリム(イスラーム教信者)にとって信仰の拠り所であると同時に生活の規範でもあり、イスラーム社会の根源となるものである。豚肉等の動物由来の食材を使わないハラール食品は、聖典を含めたイスラーム法で規定されている。
この聖典には、酒類による酩酊が禁止されているが、ハシシ(大麻)については明記されていない。ムハンマドが生きていた時代には、ハシシの酩酊があまり知られていなかったからと見られている。
イスラーム社会でハシシを広めたのは、イスラーム教のスーフィズム(神秘主義)といわれている。イスラーム法を学んだ法学者ウラマーの指導による形式的なものに反発する形で、10~11世紀に流行した。スーフィズムは、宗派としてではなく、多種多様な教団として今日まで存在し、ハシシを宗教上の儀式として扱ったことで、10世紀以降の読み物や詩歌にハシシの素晴らしさを伝える逸話が散見される。世界的に著名な千夜一夜物語(アラビアンナイト)にも複数箇所に登場することから、13世紀頃の庶民の生活に広まっていたと考えられている。
聖典のなかでハムル(khamr)は酒類を指していたが、法学者ウラマーは精神を麻痺させるあらゆる酩酊物質が入るものと解釈して、ハシシの宗教上の違法性を唱えるようになった。しかし、当時のムスリムの医師たちがハシシを喘息、淋病、便秘の治療や毒物の解毒剤に使っていたことや、ハシシが身体を蝕むことを客観的に証明できなかったことから、ハシシの普及を止める方法を見つけられなかった。

関連記事

powered by weblio