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北海道へストレートに向かう最短ルートで作業スケジュールを予想してみよう。小倉港で1万tの積み下ろしとしたら、入管検査も含めて同港での停泊日数は、最低でも5日。その翌日に出港すれば道内港への到着に4日を要する。3月10日頃になるか。さらなる積み下ろしで途中寄港があれば、その分、到着は遅れる。
道内入港時点での積載量は不明だが、かりにホクレンと商社分で2万tとすると、すべての原料を荷揚げするのに、降雪や降雨がないという条件で一日2000tの処理態勢で10日はかかる。
さらに港から工場への運搬も厄介な問題だ。1日に2000t荷揚げして工場に配送するには、20t積みダンプカーで100台は必要。そのダンプの手配ができるかどうか。ホクレンには、子会社のホクレン運輸がある。どちらかといえば液体物の輸送に強い。生乳や乳製品の配送のことだ。100台もの規模になれば、道内からダンプをかき集めなければならない。その頃ダンプは、排雪で道内で引っ張りだこのはずだ。
ホクレン肥料の道内工場に原料が持ち込まれ、製造態勢が整うのは、早くて3月中旬。農家の庭先へ配送となると、さらに時間がかかり、春の雪解けのタイミングとぶつかる。雪解けが早まれば、それに合わせて農作業の段取りは早まり、肥料も早めに準備しなければならなくなる。
省幹部は「春肥の7割は昨年内に農家へ配送」と説明した。この数字が合っているかどうかは別として6割程度は、その通りのようだ。早めに配送されるのは、輸送が困難となる日本海側の積雪地帯で、稲作が多い。従って、春肥不足が生じるのは、降雪が少なく肥料成分でもリン安を多用する十勝など国内最大の畑作地帯。その十勝の雪解けは、3月になって気温が上昇したことから、例内より早いという見方が強まっている。
疑似固結でクレーム殺到か
かりにモロッコから緊急輸入した原料で不足分をカバーできて、春作業に間に合うように製品を農家に届けることができても、それ以上に厄介な問題が待ち構えている。品質の問題だ。
それを認めるホクレンの内部文書がある。前月号でも取り上げたが、道内JAへの「令3肥1月以降の出荷対応」と題した通知文書だ。その最後の方で品質問題のことに触れて、次のように記述している。
「今回は緊急で新規ソースから導入した原料を使用することから、一部の銘柄においては疑似固結が懸念されますが、代替品が無く交換対応ができないことから崩して使用願います」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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