ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

コロナ、ウクライナ動乱が日本農業にもたらすもの


コロナ対策については感染者をゼロに近づけることが最優先課題であり、そのために外出や営業が制限され、社会経済に莫大な損害を与えている。それでは対策を緩めたらどうなるのか? テレビに出演する専門家は、重症者が溢れて医療機関が崩壊すると警告し、人々はこれを信じて自粛している。しかしそれは本当か? 日本はじめアジア、アフリカ諸国は欧米諸国に比べて感染者も死者も一桁少ないという幸運に恵まれ、日本の流行のピークは欧米で言えば対策を緩める程度の数である。オミクロンBA2株の広がりで感染者はなかなか減らないにもかかわらず、英国、ドイツはじめ各国は規制を撤廃し、ウィズコロナに舵を切った。日本は地域的な幸運に加えてワクチンと治療薬の普及によりコロナのインフルエンザ化が進んでいる。にもかかわらず相変わらずのゼロコロナ志向を続け、国民に自粛を呼びかけている。医療現場の困難な状況は事実だが、それはコロナを感染症法上の2類に指定し、一部の病院しか感染者を扱えないように規制した結果であり、人災である。現実的リスクより観念的リスク対策を優先し、リスク最適化の考え方が欠如していると言えよう。
リスクは4つに分類できる。第1はよく知っている危害が頻繁に起こる場合で、食中毒や交通事故がその例である。第2は危害の存在は分かっているけれどいつ起こるのかわからない場合で、富士山噴火や福島第一原発問題がその例である。第3はどんな危害かは不明だがそれが起こることは分かっている例で、未知の感染症、コロナがその例である。第4は予想もしないことが突然起こる場合で、これをブラックスワン問題という。ヨーロッパ人が初めてオーストラリアに行った時に黒い白鳥を見て、ここは悪魔の土地だと恐れたことから出た言葉で、BSE問題がその例である。こうしてみると、事前の対策が可能なのは1番目だけで、いつ起こるのか分からないものへの対策は後回しにされがちであり、何が起こるのか分からなければ対策の取りようがない。
リスク認知は未来予測であり、その根拠は過去の事例と科学的論理しかない。だから正確な予測は不可能だ。ウクライナではロシアがいつか攻め込むと予測していたと聞くが、他の国はそうではなかった。結局ウクライナが正しく、日、米、欧各国はロシア制裁に踏み切ったが、その代償としてエネルギー供給不足という大きなリスクを受け入れた。影響が特に大きかったのがドイツだ。原発と石炭火力発電を廃止し、不足するエネルギーの大部分をロシア産天然ガスに依存するという政策は変更を迫られている。ロシアの政治を信じてサハリンでの石油とガス田の開発に大きな投資を行った日本もまた、ロシア制裁に加わったものの、サハリンから手を引けないというジレンマに陥っている。プーチンという大きなリスクに対する認知の甘さは他の国にも共通している。ロシアを国連人権理事会から追放する投票に賛成が93カ国であったのに対して、棄権と反対が82カ国もあったことは、ロシアの天然ガス、石油、石炭、小麦、そして武器に依存する国が多数あることを示している。

関連記事

powered by weblio