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特集

コロナ、ウクライナ動乱が日本農業にもたらすもの


ウクライナ侵攻による影響は、夏にかけて出てくるはずですから、物価上昇はさらに続くものと考えられます。
資材価格、物流費、梱包費、高熱費、燃料費等のコストアップをどこまで価格転嫁できるのか、あるいは節減できるのかが問われるわけです。賃金も上昇したところですから、従業員一人当たりの利益額と売上総利益高経費率の二つの経営指標にフォーカスしながら経営を行うことが重要となります。
農業経営において販売価格の引き上げはなかなか慎重にならざるを得ない問題ですが、流通事業者に価格形成権を握られている現状がある場合は、その状況を打ち破る機会だと考えるべきなのかもしれません。経費率を明確に示し、取引先と取引価格について協議してみることをお薦めします。
また、消費市場の冷え込みの状況を注視しながら価格転嫁の可能な範囲、価格転嫁が可能な品目・販売先を見極め、販売先の一部変更も含めて検討することが重要となります。さらに、消費需要が落ち込む時期には、利益率よりも売上高の増加と市場シェアの確保・拡大を重視した対応が必要となります。需要回復時にそれまでの収益減を一気に取り戻すためには、シェアの拡大が不可欠だからです。

【5│金融為替市場への影響】

有事の際に最もリスクが高いのが金融・為替市場への影響です。有事には、最も安定した通貨へとお金が流れます。
米国の金利引き締め強化による、日米間の長期金利格差の拡大もあって、外国為替市場での円安傾向が続いていたところへ、今回のロシアのウクライナ侵攻の影響による有事の資金シフトが起こり、円売り・ドル買い傾向が加速したようです(図9を参照)。
コロナ禍の収束による輸出量の回復に期待していた農業経営者のみなさんにとって、この円安傾向は追い風となるはずです。もちろん、ドル建てでの契約であることが前提ですが。
さらに、欧米諸国や日本を除くアジア各国の物価上昇率はかなり高く、インフレ傾向にあるため、より有利な状況となるはずです。
物価上昇の影響への対応策として販売先の一部変更の検討が必要だと前述しましたが、可能であれば輸出への振り替えが最も望ましいと言えるでしょう。
日本の金利政策の変化の有無が気になるところですが、日本の低金利政策が変更される可能性は低いと思われます。日銀や政府は、日米協調での経済政策を行うと相変わらず変わり映えのしない発表を繰り返していますが、米国が状況に応じて金利引き締め強化などの先手を打っている中、全く身動きできない状況に追い込まれているというのが日本の現状です。

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