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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ドイツ(2) ヘンプ先進国が普及拡大に挑む 薬用植物(ハーブ)としてのヘンプ

「ものづくり立国」としての国際競争力を確保するために国全体のデジタル化を国策に掲げているドイツ。2011年から産官が一体となり推し進めた製造業の改革「インダストリー4.0」に続き、農業分野でも16年に「農業4.0」が提唱された。農村地域に都市と同等の生活条件の創出、都市の人々の農村への回帰・新規参入を重要な政策課題に挙げている。
ヘンプ栽培が合法化された96年以来、住宅用断熱材、自動車内装材、ヘンプ食品といった新たな市場を開拓してきた(本誌18年5月号)。だが、17年3月に薬用大麻の利用が合法化されてからその状況は大きく変わってきた。

「薬用大麻」の合法化

病気の治癒を目的とする「医療用(medical)」と似ているが、「薬用(medicinal)」は医薬品より人体への作用は緩やかで、何らかの予防効果、改善効果をもたらすものが該当する。同国では医師や薬局がハーブ医薬品を扱っており、日常的に使う文化が根付いている。医薬品としてのハーブ(薬草)の有効性と安全性については、保健省が1978年に設置した有識者会議コミッションEが380の文書を公開している。
同国の麻薬法では、マリファナの主成分であるTHC濃度が0.2%以上の薬用大麻は、長らく付属書Iに記載され、取引・販売を禁じる麻薬として規制されてきた。17年3月の法改正により、薬用大麻は付属書IIIの「販売および処方できる薬物」に位置づけられた。その表記は次のとおりである。
「薬用大麻は、1961年国連麻薬単一条約に準拠した国家管理下での栽培、および完成した医薬品として認可された調剤に由来する場合にのみ許容される」
この法改正に伴い、ドイツで医薬品承認を所轄する連邦医薬品医療機器研究所(BfArM)には、薬用大麻局(Cannabisagentur)が新設された。薬用大麻は、既存の治療より効果があると医師が判断すれば処方でき、医師の処方箋があれば健康保険(社会保障法第5巻第31章-6による)の対象となる。20年に流通した薬用大麻の乾燥花は9439kgで、34万165件の処方箋が発行され、健康保険で1億6500万ユーロ(約216億円)が支払われた。利用した患者は約9万人に及ぶという。販売価格は20年3月以降、1g当たり9.52ユーロ(約1245円)の固定価格が適用されている。

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