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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
ドイツ(2) ヘンプ先進国が普及拡大に挑む 薬用植物(ハーブ)としてのヘンプ
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第53回 2022年04月25日
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薬用大麻局は、オランダやカナダからの輸入品に頼ることを懸念して国内栽培化に踏み切った。19年春に入札を実施し、カナダに本社を置くAphria社とAurora社、ドイツ企業のDemecan社の3社に4年間で計1万400kgの栽培・加工・販売を認めた。流通に関しては、20年夏からCansativa社が連邦医薬品医療機器研究所の独占的パートナーを担っている。同社は欧州医薬品製造管理・品質管理基準(EU-GMP)の認定企業で、薬用大麻局が定めた1g当たり2.3ユーロ(約299円)で生産者から買い取り、全国の薬局へ再販売している(図1)。
同国で乾燥花として販売できる薬用大麻は、「THC20%」「THC15%」「THC5.9%/CBD5.9%」の3つの品種しか認められていない。カナダなど北米では数千種の品種が選択可能だが、品種選択の余地が全くない。また、申請者の4割しか保険適用が認められていないことと、効果効能に関する研究開発への投資がさらに必要であることが課題である。
ヘンプ栽培の栄枯盛衰とCBDを巡る裁判
同国の産業用ヘンプは、連邦食糧農業省の実施機関である連邦農業食品庁(BLE)が主務官庁である。解禁当初の96年には568人・1416ha規模だったが、07年にEUの農業補助金が廃止されると13年には86人・437haにまで縮小した。しかし、13年夏に放映された米国CNNの医療番組をきっかけに、ヘンプ由来のCBDへの注目が高まり、ドイツ国内でもヘンプの栽培面積は増加に転じた(図2)。さらに薬用大麻の合法化によりTHC濃度が高い薬用大麻との区別が明確になり、CBDを目的とした花葉利用のヘンプの栽培が増加している。
一方でCBDを多く含む品種もハーブではないのか?という疑問は残されたままだ。CBDを取り巻く急激な変化に待ったをかけたのが、欧州食品安全機関(EFSA)である。19年1月に、CBDを1997年以前に食経験のない新規食品原料(ノベルフード)に認定し、安全性を裏付ける科学的データなしに販売できないと表明したのだ。これを受けて、ドイツに事務局を置く欧州産業用ヘンプ協会(EIHA)は、関連企業に呼びかけて、共同の安全性試験プロジェクトを開始した。その後、20年11月に欧州連合司法裁判所は「CBDは麻薬ではない」という判決を出した。
また、ドイツ国内では、THCを最大0.33%含んでいたヘンプ花葉の植物製品であるハーブ茶を巡る裁判で、地方裁判所が違法と判断したものの、21年3月に連邦最高裁判所が「酩酊目的を除いて販売することは合法である」という判決を下した事例もある。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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