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土門「辛」聞

偽旗の肥料行政―食料安全保障に逆行する砂漠のダチョウ

自民党農林族が食料安全保障の議論を始めた。大変結構なことである。党内に「食料安全保障に関する検討委員会」(食料安全保障検討委員会)を設置。委員長には元農相の森山裕衆院議員が就いた。3月10日の会合では、「5月までに中間とりまとめを行い、新たな食料安全保障戦略の策定」をすることを決めている。今月号は、その議論の一助となるような話題を提供したい。
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ロジスティックス無視の原料調達で到着遅れ

軍事に限らず安全保障と名がつくものの要諦は、ロジスティックス。わが旧帝国軍隊は兵站(へいたん)と呼んでいた。作戦計画に従って兵器や兵員を確保し、管理し、補給するまでのすべての活動を指す。これがいかに大事か。冷戦時代に発足した米国統合参謀の初代議長、オマー・ブラッドレー元帥の言葉を紹介しておく。
「戦争のプロは、『兵站』を語り、素人は『戦略』を語る」
目の前にロジスティックスの「失敗の本質」のような検証材料がある。本誌3月号から追い続けている全農・ホクレンなどによるモロッコから肥料原料(リン安)大輸送作戦だ。
中国政府が肥料29品目の輸出規制をかけたのは、昨年10月15日。ほぼ100%輸入に頼るリン安は、遠いアフリカのモロッコから緊急輸入することになった。全農・ホクレンなどが3隻の船をチャーターして緊急輸送したが、その航跡を再検証してロジの問題点を洗い出してみたい。
【第1船=QUEEN ISLAND】3月11日、北海道・釧路港にてようやく任務完遂。振り返ってみれば、ロジスティックスのお粗末さだけが目立つ。旧軍隊の経理将校的な視点で総括すれば、やたら船舶チャーター料を無駄遣いして、それに見合う結果を最後まで出せなかったことである。
この局面での最重要課題は、畑作物が主作物で、しかもリン安を大量に消費する食料基地・北海道へ一刻でも早く送り届けることだったはずだ。中国の輸出規制は、ちょうど北海道での春肥製造がピークを迎えるタイミングで起きた。ホクレンも含めての道内肥料工場は、一日千秋の思いで原料の到着を待っていたはずだ。
第1船が、モロッコの積み出し港ヨルフ・ラスファー港を出港するのは、1月1日(日本時間)。北海道・釧路港で荷物を下ろして任務完遂まで69日間もかかった。ちなみに国内最初の目的港(広島・江田島港)まで38日間。国内に着いてから31日間も要した。巡航船のように、最終目的港の釧路港まで原料を配り回っていたのである。
ロジスティックスの基本は優先順位をつけることだ。それを全農はできなかった。そう判断した根拠を示しておく。

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