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ロジスティックスを根底から支えるのは物流インフラ。今回の場合は、港湾だった。格好の検証材料がある。3月号で取り上げた全農チャーターによるギリシャの海運会社所属のオミクロン・ティティーナ号(以下オミクロンT号)が、土壇場で日本行きをキャンセルした顛末だ。
モロッコのヨルフ・ラスファー港の沖合にアンカーを打つのは昨年12月31日のこと。第1船・クィーン・アイランド号が日本に向け出発する前日のことだった。筆者が同船を確認するのは、1月3日。同港沖合でアンカーを打って停泊中。AIS情報が伝える目的港は、「釧路港」。てっきりモロッコから直航するものと思った。
以降、ずっとAIS情報で同船をウォッチ。まるで徘徊老人のような航跡だった。同港沖合100kmの地点で停泊しているものと思っていたら、突然、同港バースに着岸して荷物を積み込む。それで出港するのかと期待していたら、また沖合で停泊。その繰り返しが2回あった。利用したバースと、船の喫水線の下がり具合から、最初にリン安、2回目にリン鉱石を積み込んだようだ。
オミクロンT号が同港を出港するのが同20日〔日本時間〕。てっきり釧路港に直航すると思って何気なく目的港を確認したら、呆気にとられてしまった。目的港が急遽、バルト海のドイツ・ロストック港へ変更となっていたのだ。突然の目的港変更は、日本の港湾事情が原因ではなかったかと思う。
この船は、バルク船でもパナマ運河が通航できるパナマックス級の大型船。釧路港は、穀物を運ぶパナマックス級が利用できるバースがあっても、肥料原料の積み下ろしに使えるバースはない。実は、同港にホクレンは、穀物を扱う専用バースを所有しているが、肥料と穀物のコンタミネーションの関係で使えなかったようだ。
ここからは推測だが、オミクロンT号は、パナマックスなので、釧路港の公共埠頭は、船のサイズに合わず、小型船へのトランシップができる港をギリギリまで探していたのではないか。当時もいまもコロナ感染症で物流は混乱。とくに港湾はひどかった。国内港はもとより韓国の釜山港などでのトランシップを考えたが、積み下ろしのバースを見つけることができなかった。
そのことが現地を出港する間際になって分かり、せっかく出港態勢が整いながら釧路行きを断念。仕方なく原料をヨーロッパに転売したということではなかろうか。その見方に立てば、小倉港を目前に韓国・光陽港に向かった第2船の謎の動きも、バース探しだったように整理できる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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