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今後、肥料原料の調達先はアフリカなどにも拡がっていく。それに伴い用船も大型化する。それに見合った港湾整備が必要ということだ。
“砂漠のダチョウ”の“偽旗作戦”
政府にとって、危機管理の要諦は、正確な情報発信だ。プロパガンダで国民を騙し、挙げ句の果てに国を滅ぼしていく様は、ウクライナ侵攻で世界から総スカン状態のプーチン・ロシアが格好の例だ。農水省・肥料行政のプロパガンダはひどすぎる。
農水省が、肥料の需給事情の逼迫に気が付くのは、外部からの指摘を受けた9月末のことだった。全農やホクレンだけでなく商社からの情報提供を呼びかけ、従前の肥料行政とは違うなと評価したのも束の間、すぐにボロを出してくれた。肥料関係者に、「騒ぐな、パニックが起きるから」と呼びかけたことだ。
それを伝え聞いたとき、こりゃ“砂漠のダチョウ”並みの危機管理だなと思った。砂漠のダチョウは背後から敵が近づいてくると、砂漠に頭を突っ込んでしまうらしい。つまり現実逃避の心理を言い表したものだ。
その次に飛び出してきたのが、春肥用の肥料原料は「例年に近い供給量は確保できる」(安岡澄人審議官)という楽観論。これこそプロパガンダ。具体的根拠を示さず、国民を誤った方向に誘導しようとしている。
その楽観論は、時節柄、ウクライナに攻め入ったロシア軍の“偽旗作戦”の類いのものかなと思ったりもした。この場合の“偽旗”は、楽観論を各方面に吹聴することで、農協組織や自民党農林族などが肥料高騰対策を要求してくることを牽制する意味でなら理解できないこともない。
安岡審議官の“偽旗”は、すぐにバレてしまっている。早くから「農水省は、大丈夫だ、大丈夫だと言うんですよね。本当に大丈夫なのかな。(肥料不足問題は)この春だけではないみたいなのに……」と、道内の肥料関係者から逆に心配される始末。
前月号で21肥料年度(21年6月から22年5月)ベースのリン安輸入量について、「例年に近い供給」量が確保できるような記述をしたが、北海道の春肥向けに限ると、4月の声を聞いても輸入量は安岡審議官が説明する「例年に近い供給」量には届いていない。
4月1日公表の2月分輸入量は、前月分より倍の8.5万t。その7割近くは広島・呉港での通関。全農向けとみられ、ホクレンなど向けの釧路港通関は1.6万1t。米国とモロッコから第1船の分。5月1日公表の3月分輸入量は、モロッコからの第2船と第3船の1万t程度が見込める程度。春肥原料としての量は圧倒的に足りていない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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