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【新・農業経営者ルポ】
滋賀を「小麦王国」に
- (株)イカリファーム 代表取締役 井狩篤士
- 第214回 2022年05月30日
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小麦が急成長
イカリファームは琵琶湖にほど近い、田んぼの広がる一角にある。本社を訪れるとまず目に飛び込んでくるのは、道路沿いに立つ明るいオレンジ色の外壁の乾燥調製施設だ。この施設は、パン用に向く超強力品種のための設備として、補助金も使って整備した。「小麦王国」建国のための重要な拠点だ。小麦だけではなく、コメや大豆の乾燥調製もできる。「初期投資の回収はすごく早い」と井狩はいう。
同社で生産するのは、収量の高さで知られる超強力品種「ゆめちから」と、強力品種「ミナミノカオリ」。乾燥調製施設で処理する小麦の過半は、近隣の農家から集荷する。小麦を出荷する農家は2021年産で15軒、今年はさらに7軒増える見込みだ。
小麦の生産が増えているのは「単位面積当たりの所得はコメの三倍になる」という収益性の高さが大きい。米価下落の出口が見えない今、「コメの収支は正直、トントン」。同社では、作物の生産原価と販売や交付金による収入を正確に計算している。それによると、「一番収益が低いのが、コメの中でも反収の低い品種。大豆はまあまあ。圧倒的に小麦の収益が高い」のだ。
毎年10~15haずつ預かる農地が増えており、増えた分はコメ以外の作物をなるべく増やすようにしている。その結果、今ではコメ、小麦、大豆の生産面積がそれぞれ85、85、90haと、ほぼ拮抗している。自社の生産の伸び以上に、提携する農家が増えているので、小麦の取扱量の増加は既定路線だ。
拡大見据えた設備投資
乾燥調製施設の道路を挟んで向かい側には、広い空き地がある。ここには近々、低温倉庫を建設する。
「貯蔵のための置き場がなくなって。低温倉庫を持つ物流会社は、空いていると入れてくれるんですけど、自分たちの荷物の置き場がなくなったら、僕らの小麦は持って出てくださいとなる。それで非常に困って、自分たちで建てないといけないと決めたんです」
乾燥調製施設にも貯蔵機能はあるが、それでは到底足りなくなっているのだ。倉庫が完成すれば、小麦を倉庫に仮置きしておける。仮置きした小麦をコメの乾燥調製が始まるまで、あるいは一段落ついた冬に調製すれば、施設をずっとフル稼働できる。
「そうすると、施設の稼働率が上がるので、それだけでも会社の経済状態が非常に良くなる」
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井狩篤士 イカリアツシ
(株)イカリファーム
代表取締役
1978年4月、滋賀県生まれ。滋賀県立大学を卒業後、2001年に父親のもとで就農。家族経営で規模拡大を続け、08年に法人化。15年、現職に就く
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