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コロナ、ウクライナ動乱が日本農業にもたらすもの(後編)

世界の国と人々、そして日本人が経験した新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大とそれによる様々な政治と社会的混乱。さらに、世界中を巻き込む形で人々を不安の中に陥れているウクライナ動乱。既存のメディアによる不安を煽る報道合戦とインターネットを介した虚実織り交ぜての情報の拡散も現代ならではの時代状況である。それにさらされ踊らされる国民と政府の混乱。少なからぬ人々は伝えられる情報の危うさにも気づき始めている。こうした事態は、日本の国民と政治がこれまで当然のことと思ってきた日本の共同幻想を打ち壊すことになるのではないだろうか。
例えば、日本国憲法を金科玉条とする安全保障への考え方への懐疑、電力不足とエネルギー不安を体験しての反原発への疑問、コロナ規制で見えてきたゼロリスクを求めることの不毛さ、これまで想像もしなかった食糧供給への不安、円安の進行による日本の将来への不安。メディアが煽り、政府もそれに乗ったまん延防止という行動規制の結果による経済衰退。こうしたコロナ、ウクライナ動乱はこれからの日本の社会、そして農業界にどのような影響をもたらすのだろうか。
(昆吉則)

日本の眠っている潜在力を揺り動かすとき

(株)資源・食糧問題研究所 代表 柴田明夫

シカゴ穀物市場は今年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻の一報を受け、小麦相場が急騰。3月7日には、小麦先物(期近)価格は1ブッシェル(27.2kg)=13ドルを突破し、2008年2月以降、14年ぶりに過去最高値を更新した。大豆、トウモロコシ(25.4kg)も連れ高となった。その後、小麦は11ドル前後、大豆は17ドル前後、トウモロコシは8ドル前後での値動きとなっているが、依然として上振れリスクは大きい。

【ロシアのウクライナ侵攻による当面の影響】

小麦やトウモロコシなどウクライナ産の穀物のおよそ95%はトラック、鉄道、さらに川などの水路を利用し、黒海沿岸のオデーサ(オデッサ)、ミコライユ(ミコラーイ)港などに輸送し、主に中東・北アフリカ、サブサハラ向けに輸出される(図1)。ロシア産小麦と合わせると、世界の小麦輸出量約2億t強のうちの3割弱(ロシア16%、ウクライナ10%)を占める(図2)。
ウクライナでは、毎年4~5月に冬小麦の収穫、5~6月にかけて春小麦やトウモロコシなどの作付けが始まる。4月初めに入りすでに戦争は長期化・ドロ沼化の様相を呈しており、小麦などの冬作物については20%の農地で収穫ができず、トウモロコシなどの春作物については30%の農地で作付けが困難になっているとの報道がある。生産者の郊外避難や、ウクライナ軍への従軍で農業従事者の人手不足、トラクターなど農業機械の燃料不足(軍用車向けへの転用)、さらに農地や貯蔵庫などサプライチェーンの破壊などが伝えられているためだ。
国連食糧農業機関(FAO)のQu Dongyu事務局長は3月11日、「ロシア・ウクライナ紛争に基づく世界の食料安全保障に関する新たなシナリオ」とする意見記事を発表している。小麦供給の30%以上をロシアとウクライナに依存している国は約50カ国に及び、その多くは後発開発途上国や北アフリカ、アジア、近東の低所得の食糧不足国である。このため、「ウクライナとロシアの穀物と油糧種子(大豆、ヒマワリ油)の生産に対するサプライチェーンの混乱と、ロシアの輸出に対する制限は、これら国々の食料安全保障に重大な影響を与えるだろう」と警告している。

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