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【土門「辛」聞】
偽旗の肥料行政 納税者に回された作戦失敗のツケ
- 土門剛
- 第212回 2022年05月30日
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作戦は失敗した。自民党農政族が要求してきた形を変えた肥料高騰対策に農水省は“全面屈服”したことだ。調達先の多角化などの支援という名目で全農などに100億円の規模で経費を補填することにした。いつものパターンで全農の要求が自民党農政族を通じて実現しただけのことで、肥料供給問題の抜本的解決にはつながらない。その顛末を整理してみよう。
“偽旗作戦”はあっけなく頓挫した。突如、2月になって自民党が「食料安全保障に関する検討委員会」(党検討委員会)という組織を立ち上げ、肥料高騰対策を求める狼煙(のろし)を上げたことだ。
しかも委員長は、強面の森山裕衆院議員(鹿児島4区選出)が就任。安岡審議官にとって、その種の組織が立ち上がったこともショックだったが、その委員長に森山氏が就いたことは、もっと大きなショックだったに違いない。その瞬間、“偽旗”は下ろさざるを得ず、ほぼ同時に、森山氏の意向に沿う肥料高騰対策の準備に入った。
第一報は、2月16日付け産経新聞の特ダネだった。政治部出稿の「〈独自〉自民が食料安保の新組織国家戦略の柱に」。省内の狼狽ぶりは、この記事の2日後に開かれた大臣定例会見での金子原二郎大臣の答弁ぶりに凝縮されている。党検討委員会に対する農水省の対応を聞かれた金子大臣は、事務方が用意したペーパーを淡々と読み上げていた。
「報道については承知していますが、自民党内における議論についてのコメントは差し控えます。ただ、自民党において食料安全保障に関する議論が具体的に開始されれば、農林水産省としてもその議論に適切に対応してまいりたいと思います」
このコメントで見逃していけないのは、後段部分。食料安全保障に関する議論のことだ。金子大臣が、党が議論を開始しなければ、農林水産省としてはそのイニシアティブを取らないと明言した。これは別の意味で問題を残した。
“帰ってきた男”に官僚は大ショック
“偽旗作戦”はあっけなく頓挫した。突如、2月になって自民党が「食料安全保障に関する検討委員会」(党検討委員会)という組織を立ち上げ、肥料高騰対策を求める狼煙(のろし)を上げたことだ。
しかも委員長は、強面の森山裕衆院議員(鹿児島4区選出)が就任。安岡審議官にとって、その種の組織が立ち上がったこともショックだったが、その委員長に森山氏が就いたことは、もっと大きなショックだったに違いない。その瞬間、“偽旗”は下ろさざるを得ず、ほぼ同時に、森山氏の意向に沿う肥料高騰対策の準備に入った。
第一報は、2月16日付け産経新聞の特ダネだった。政治部出稿の「〈独自〉自民が食料安保の新組織国家戦略の柱に」。省内の狼狽ぶりは、この記事の2日後に開かれた大臣定例会見での金子原二郎大臣の答弁ぶりに凝縮されている。党検討委員会に対する農水省の対応を聞かれた金子大臣は、事務方が用意したペーパーを淡々と読み上げていた。
「報道については承知していますが、自民党内における議論についてのコメントは差し控えます。ただ、自民党において食料安全保障に関する議論が具体的に開始されれば、農林水産省としてもその議論に適切に対応してまいりたいと思います」
このコメントで見逃していけないのは、後段部分。食料安全保障に関する議論のことだ。金子大臣が、党が議論を開始しなければ、農林水産省としてはそのイニシアティブを取らないと明言した。これは別の意味で問題を残した。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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