ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

土門「辛」聞

偽旗の肥料行政 納税者に回された作戦失敗のツケ

前号で農水省の“偽旗作戦”について書いた。安岡澄人審議官が編み出したこの作戦は、結局、相手には通じなかったようだ。相手とは自民党農政族。つまり“偽旗作戦”とは、肥料原料は「例年に近い量は確保できる」とメッセージを送り、自民党農政族が予算の伴う肥料高騰対策を持ち出してこないようにするのが目的だった。
作戦は失敗した。自民党農政族が要求してきた形を変えた肥料高騰対策に農水省は“全面屈服”したことだ。調達先の多角化などの支援という名目で全農などに100億円の規模で経費を補填することにした。いつものパターンで全農の要求が自民党農政族を通じて実現しただけのことで、肥料供給問題の抜本的解決にはつながらない。その顛末を整理してみよう。

“帰ってきた男”に官僚は大ショック

“偽旗作戦”はあっけなく頓挫した。突如、2月になって自民党が「食料安全保障に関する検討委員会」(党検討委員会)という組織を立ち上げ、肥料高騰対策を求める狼煙(のろし)を上げたことだ。
しかも委員長は、強面の森山裕衆院議員(鹿児島4区選出)が就任。安岡審議官にとって、その種の組織が立ち上がったこともショックだったが、その委員長に森山氏が就いたことは、もっと大きなショックだったに違いない。その瞬間、“偽旗”は下ろさざるを得ず、ほぼ同時に、森山氏の意向に沿う肥料高騰対策の準備に入った。
第一報は、2月16日付け産経新聞の特ダネだった。政治部出稿の「〈独自〉自民が食料安保の新組織国家戦略の柱に」。省内の狼狽ぶりは、この記事の2日後に開かれた大臣定例会見での金子原二郎大臣の答弁ぶりに凝縮されている。党検討委員会に対する農水省の対応を聞かれた金子大臣は、事務方が用意したペーパーを淡々と読み上げていた。
「報道については承知していますが、自民党内における議論についてのコメントは差し控えます。ただ、自民党において食料安全保障に関する議論が具体的に開始されれば、農林水産省としてもその議論に適切に対応してまいりたいと思います」
このコメントで見逃していけないのは、後段部分。食料安全保障に関する議論のことだ。金子大臣が、党が議論を開始しなければ、農林水産省としてはそのイニシアティブを取らないと明言した。これは別の意味で問題を残した。

関連記事

powered by weblio