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【土門「辛」聞】
世界の食料安保を“人質に”ウクライナに停戦持ちかけか
- 土門剛
- 第213回 2022年06月27日
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ところがロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナの農地は激しい戦場に、ウクライナ側の積み出し港はロシア軍の爆撃対象となってしまった。ウクライナ侵攻で懸念される食料安全保障のことを考えてみよう。
食料安全保障で国際世論に火がついたのは、ロシアによる首都キーウ攻略が失敗、戦線がウクライナ東部地方に集中するようになってからだった。ロシア国境に近い北東部のハルキウから、南のクリミア半島へ向かう内陸側の4州。小麦なら、この地域だけで3割近くを生産している。戦闘の激しいドンバス地域と呼ばれるロシア国境に近い2州(ルハンスク州とドネツク州)は、小麦畑で両軍の戦車がぶつかり合い、ロシア軍は地雷を埋設していく。農作業どころではないのだ。
ロシア軍による侵攻14日前の2月10日、欧州外交評議会はロシアに侵攻を思いとどまるよう、次のようなメッセージを出していた。
「ロシアとウクライナの紛争が激化することで、世界供給の29%近くを占める両国からの小麦輸出に大きな影響が出る恐れがある。パンデミックによるサプライチェーンの混乱が主な原因で食料価格が上昇している現在、これは食料不安の脅威をさらに増大させることになる。
パン価格のさらなる高騰は、エネルギー価格の急上昇と相まって、中東と北アフリカに深刻な不安定化をもたらす可能性がある。この地域はすでに世界で最も高いレベルの食糧不安を抱えており、さらなる価格上昇は人道的危機を深め、より広範な不安を助長する可能性がある。中東と北アフリカでこうした影響を免れる国はほとんどないだろう。イエメンやレバノン(いずれもウクライナの小麦の主要な買い手)など、飢饉に近い状態にある国は、最悪の事態に直面するだろう。しかし、ウクライナから必要な物資を輸入しているリビアやエジプト、食料価格の高騰がしばしば国民の怒りを買ってきたチュニジアやアルジェリアといった国々にも、価格上昇は脅威となる。これらの国は、ロシア軍がウクライナの国境に集結するのを警戒しているのである」
世界の小麦需給が危機的状況に
食料安全保障で国際世論に火がついたのは、ロシアによる首都キーウ攻略が失敗、戦線がウクライナ東部地方に集中するようになってからだった。ロシア国境に近い北東部のハルキウから、南のクリミア半島へ向かう内陸側の4州。小麦なら、この地域だけで3割近くを生産している。戦闘の激しいドンバス地域と呼ばれるロシア国境に近い2州(ルハンスク州とドネツク州)は、小麦畑で両軍の戦車がぶつかり合い、ロシア軍は地雷を埋設していく。農作業どころではないのだ。
ロシア軍による侵攻14日前の2月10日、欧州外交評議会はロシアに侵攻を思いとどまるよう、次のようなメッセージを出していた。
「ロシアとウクライナの紛争が激化することで、世界供給の29%近くを占める両国からの小麦輸出に大きな影響が出る恐れがある。パンデミックによるサプライチェーンの混乱が主な原因で食料価格が上昇している現在、これは食料不安の脅威をさらに増大させることになる。
パン価格のさらなる高騰は、エネルギー価格の急上昇と相まって、中東と北アフリカに深刻な不安定化をもたらす可能性がある。この地域はすでに世界で最も高いレベルの食糧不安を抱えており、さらなる価格上昇は人道的危機を深め、より広範な不安を助長する可能性がある。中東と北アフリカでこうした影響を免れる国はほとんどないだろう。イエメンやレバノン(いずれもウクライナの小麦の主要な買い手)など、飢饉に近い状態にある国は、最悪の事態に直面するだろう。しかし、ウクライナから必要な物資を輸入しているリビアやエジプト、食料価格の高騰がしばしば国民の怒りを買ってきたチュニジアやアルジェリアといった国々にも、価格上昇は脅威となる。これらの国は、ロシア軍がウクライナの国境に集結するのを警戒しているのである」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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