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土門「辛」聞

世界の食料安保を“人質に”ウクライナに停戦持ちかけか

ロシアとウクライナは、世界有数の小麦輸出国だ。国連食糧農業機関(FAO)の統計では、小麦輸出国のトップがロシアで、ウクライナは5位。両国合わせての輸出量は、世界全体の27.9%になる。両国とも黒海に面した港から各国に積み出される。
ところがロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナの農地は激しい戦場に、ウクライナ側の積み出し港はロシア軍の爆撃対象となってしまった。ウクライナ侵攻で懸念される食料安全保障のことを考えてみよう。

世界の小麦需給が危機的状況に

食料安全保障で国際世論に火がついたのは、ロシアによる首都キーウ攻略が失敗、戦線がウクライナ東部地方に集中するようになってからだった。ロシア国境に近い北東部のハルキウから、南のクリミア半島へ向かう内陸側の4州。小麦なら、この地域だけで3割近くを生産している。戦闘の激しいドンバス地域と呼ばれるロシア国境に近い2州(ルハンスク州とドネツク州)は、小麦畑で両軍の戦車がぶつかり合い、ロシア軍は地雷を埋設していく。農作業どころではないのだ。
ロシア軍による侵攻14日前の2月10日、欧州外交評議会はロシアに侵攻を思いとどまるよう、次のようなメッセージを出していた。
「ロシアとウクライナの紛争が激化することで、世界供給の29%近くを占める両国からの小麦輸出に大きな影響が出る恐れがある。パンデミックによるサプライチェーンの混乱が主な原因で食料価格が上昇している現在、これは食料不安の脅威をさらに増大させることになる。
パン価格のさらなる高騰は、エネルギー価格の急上昇と相まって、中東と北アフリカに深刻な不安定化をもたらす可能性がある。この地域はすでに世界で最も高いレベルの食糧不安を抱えており、さらなる価格上昇は人道的危機を深め、より広範な不安を助長する可能性がある。中東と北アフリカでこうした影響を免れる国はほとんどないだろう。イエメンやレバノン(いずれもウクライナの小麦の主要な買い手)など、飢饉に近い状態にある国は、最悪の事態に直面するだろう。しかし、ウクライナから必要な物資を輸入しているリビアやエジプト、食料価格の高騰がしばしば国民の怒りを買ってきたチュニジアやアルジェリアといった国々にも、価格上昇は脅威となる。これらの国は、ロシア軍がウクライナの国境に集結するのを警戒しているのである」

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