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世界農業遺産を訪ねて

【新潟県】トキと共生する佐渡島

絶滅から復活へ、トキの楽園再生は生物多様性の証明である。佐渡は先進国として初めて世界農業遺産に認定された。環境のために支払う「エシカル商品」(トキ認証米)が実現しており、価格形成の新機軸だ。佐渡の文化・鬼太鼓を通じて世界に進出(コメ輸出)する米農家もいる。
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1  トキと共生する佐渡―時間軸の風土

佐渡の風土は歴史が作った。佐渡は島である。しかし、大きい(日本で一番大きな島)。北に大佐渡山脈、南に小佐渡山脈が走り、真ん中に国中平野が広がっている。島の近くを対馬暖流が流れているため、夏は本土より涼しく、冬は暖かい。生物多様性に富み、3000m級の日本アルプスの植生が佐渡は1000mの山で見られ、登山者に喜ばれている。このジオパークは3億年前に形成されたも
のだ。  
佐渡の風土記には「金山」と「トキ」は必須であるが、佐渡金山は17世紀、江戸時代に発展したものであり、そして絶滅から復活したトキ(朱鷺)の再生は現代史である(1981年野生トキ絶滅、2008年野生復帰)。3億年前のジオ、江戸時代の金山、現代史のトキ。佐渡は「時間軸」が風土をつくっている。
また、佐渡はエコとエコノミーとジオが共存している島である。生物多様性の頂点にあるトキは、佐渡金山と密接不可分の関係にある。佐渡金山はエコノミーの極であるが、人口5万人に膨れ上がった相川の鉱夫たちの食を供給するために作られた棚田(沢山ある)がトキのエサ場になった。
ジオとも共存している。佐渡の独特のジオが美味しいコメ作りに影響している。国中平野は穀倉地帯だが、山が近く、きれいな水が水田を潤している。また、海に囲まれた島であるため、水田にはミネラルたっぷりの水が供給され(海洋深層水など)、佐渡米は美味しいと評判だ。食味評価は特Aランクであり、標準米でも60kgあたり1万6000円と高い。海のミネラルを活用したコメは4万円で取引されている。冷涼な気候も美味しいコメ作りに寄与している。
佐渡は“時間軸”の方が面白い。流刑地だった歴史があり(鎌倉・室町時代の世阿弥、日蓮上人、順徳上皇など)、能や鬼太鼓(おんでこ)など独自の文化も残っている。相川地区は戦国時代には海辺の寒村(わずか十数軒)に過ぎなかったが、金鉱山が発見されて江戸幕府の直轄地となり(1601年)、ゴールドラッシュで人口が爆発的に増加し5万人に膨れ上がった。寺院、遊郭が建ち並んで山師や無宿人が闊歩し、相川は「土がない」と言われるくらい、密集地帯だったようだ。

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