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【江刺の稲】
山下明郎さんのこと
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第314回 2022年09月09日
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山下さんに弊社の監査役をお願いしたのはカルビーポテトの監査役を退任されてからだが、お付き合いは在職中からだった。
最初の出会いは1980年代だったと思う。当時、農作業学会の会長だった塩谷哲夫さんに誘われて東京農工大学で行われた研究会でのことだった。その帰り、山下さんを含めて三人で中野駅近くの飲み屋でしたたかに飲んだ。山下さんはカルビーポテトの社員として塩谷さんに馬鈴薯生産の作業改善について研究委託をする立場にいた。
山下さんと一緒に水田農家に転作としての馬鈴薯作りを勧める活動に取り組んだ。山下さんにとっては産地開発だった。本誌としては同社に対価を求めるものではなく、読者に農業経営の新しい可能性を売り先の紹介をセットにして提案することだった。そうした取り組みがその後のカルビーや故・松尾雅彦氏との関係を作り、やがてカルビーポテト発行の『ポテカル』を創刊から我が社で編集することにつながった。
加工用馬鈴薯の産地開発の取り組みは、ハーベスターを引けるレベルのトラクターを持っていると同時に畑作作業体系を導入している水田農家を山下さんとともに訪ねることだった。やがて山形、千葉、福井、岐阜、岩手などで手を挙げる人が出てきた。一人5haを目安とした。当時のハーベスターの処理能力は一日50a程度、晴れて作業ができるのはせいぜい10日。雨が降れば土が乾くまで作業できない。彼らに一台500万円はしたハーベスターを買わせるのは経営的に見合わないだろうと考えた。それで我が社が機械を持ち、皆はそれをレンタルすることにして、産地間の機械の移動の相談は皆で打ち合わせてもらう。移動のための運送業者も山下さんがカルビーポテトの出入り業者に頼んだ。産地が西から北にばらけているのは収穫時期がずれるため、機械を産地リレーしながら動かしていくためだった。「我が社が機械を持って」と書いたが、機械の購入費は山下さんの退職金だった。一緒に取り組んだ読者たちは本誌を通じて以前からの知り合いで常識のある人々だった。皆からのレンタル料金で回収ができるとはいえ、山下さんの退職金を投じての事業だった。
最初の出会いは1980年代だったと思う。当時、農作業学会の会長だった塩谷哲夫さんに誘われて東京農工大学で行われた研究会でのことだった。その帰り、山下さんを含めて三人で中野駅近くの飲み屋でしたたかに飲んだ。山下さんはカルビーポテトの社員として塩谷さんに馬鈴薯生産の作業改善について研究委託をする立場にいた。
山下さんと一緒に水田農家に転作としての馬鈴薯作りを勧める活動に取り組んだ。山下さんにとっては産地開発だった。本誌としては同社に対価を求めるものではなく、読者に農業経営の新しい可能性を売り先の紹介をセットにして提案することだった。そうした取り組みがその後のカルビーや故・松尾雅彦氏との関係を作り、やがてカルビーポテト発行の『ポテカル』を創刊から我が社で編集することにつながった。
加工用馬鈴薯の産地開発の取り組みは、ハーベスターを引けるレベルのトラクターを持っていると同時に畑作作業体系を導入している水田農家を山下さんとともに訪ねることだった。やがて山形、千葉、福井、岐阜、岩手などで手を挙げる人が出てきた。一人5haを目安とした。当時のハーベスターの処理能力は一日50a程度、晴れて作業ができるのはせいぜい10日。雨が降れば土が乾くまで作業できない。彼らに一台500万円はしたハーベスターを買わせるのは経営的に見合わないだろうと考えた。それで我が社が機械を持ち、皆はそれをレンタルすることにして、産地間の機械の移動の相談は皆で打ち合わせてもらう。移動のための運送業者も山下さんがカルビーポテトの出入り業者に頼んだ。産地が西から北にばらけているのは収穫時期がずれるため、機械を産地リレーしながら動かしていくためだった。「我が社が機械を持って」と書いたが、機械の購入費は山下さんの退職金だった。一緒に取り組んだ読者たちは本誌を通じて以前からの知り合いで常識のある人々だった。皆からのレンタル料金で回収ができるとはいえ、山下さんの退職金を投じての事業だった。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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