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とりわけ、日本農業や農協が勢いをもっていた時代には、批判がよりよい農業に貢献していたと思います。しかしながら重要なのは、これまでの経緯や現状を批判したからといって、必ずしもよりよい農業につながるわけではないという状況です。
批判が弾圧されていたような時代であれば、批判が社会をよりよくする大きな力になりました。ところが、現在はインターネットを通じて、いつでも誰でも批評して世界中に発信できる時代になりました。匿名であれば所属・職名を隠して情報を発信することもできます。こうした時代だからこそ、政府や農協を批判して悪者に仕立て上げても解決しないような、より本質的なコメ問題や農業問題に迫る研究活動を目指しています。
――言葉ではわかる気がします。ただ、それでは実際にどうすればよいのか、解決策はありますか?
現時点では二つの方法があると考えています。批判というのは、本人が批判する意思がなくても、個人の主張によって間接的に批判になっている場合があります。
そこで一つ目の方法として、個人の主張の源泉となるような「農業観・農地観」に注目しています。手始めに農家・非農家問わず、農業に肯定的・批判的かにかかわらず、いろいろな方々の農業観・農地観をインタビュー形式で集めています。「現代の農業観・農地観―農業の捉え方から、農業を捉える」(https://nogyokan.com)という調査企画です。加えて、政府などの農業観・農地観の分析にも関心があります。いずれも新たな農業の展望を描く上での重要なカギを握っていると思います。
また、二つ目の方法として、主張・批判して終わりではなく、個別の主張・批判を突き合せる場が必要だと考えています。20年ほど前の映画に「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」というセリフがありました。ここのところ、選ばれた少人数の会議による決定が現場に多大な影響を及ぼすケースが増えているような気がします。むしろ、「事件は現場で起きてるんじゃない! 会議室で起きてるんだ!」と言いたくなる状態です。
まずは、所属や肩書に関係なく、誰もが気軽に参加して主張を突き合せられる場を設けること。場合によっては正式な会議室にその主張を提案できるような仕組みがあるとよいでしょう。会議室よりも現場を重視する気持ちも大切ですが、議論を通じて日本農業の活性化を図るというアプローチにも力を入れていきたいと思います。
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小川真如 オガワマサユキ
農業観・農地観収集家
1986年島根県生まれ。2009年に東京農工大学農学部を卒業、12年に同大学院農学府修士課程を修了。新聞記者を経て、早稲田大学大学院人間科学研究科にて学び、現在、農政調査委員会専門調査員、東京農工大学非常勤講師、恵泉女学園大学非常勤講師など。専門社会調査士、修士(農学)、博士(人間科学)。著書に『水田フル活用の統計データブック』『水稲の飼料利用の展開構造』がある。
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