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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ペルー 薬用植物の文化が色濃く参入企業はTHCもCBDも扱う

ペルー共和国は、空中都市で有名な古代インカの都市マチュピチュがある南米の国である。国土は日本の面積の3・4倍を有し、南北に走るアンデス山脈によって縦断され、西の乾燥した海岸地帯(コスタ)、中央のアンデスの山岳地帯(シエラ)および東のアマゾンの熱帯雨林地帯(セルバ)の3つの地帯に分かれる。人口は首都リマを中心に全国で約3297万人。主要な農産物はサトウキビ、ジャガイモ、米、アスパラガス、コーヒーで、抗炎剤のキャッツクロウや滋養強壮のマカなどの薬用植物の宝庫としても知られている。
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規制薬物コカの特例規定

ペルーにおける大麻草の産業的、医療的、嗜好的な利用は、14~16世紀のインカ帝国時代を含めても歴史的になかったとされている。その後、同国にヘンプを持ち込んだのは、ほかの南米諸国と同じく16世紀に同地を征服したスペインである。スペイン王室は、植民地との海上交通を支える帆船の帆布やロープに使うヘンプ繊維の需要に応えるためにヘンプ栽培を熱心に推進した。しかし、1821年に独立した後も、隣国チリのようにヘンプの産地化(本誌20年8月号参照)には至らず、注目されてこなかった。
その要因の一つに、コカの存在がある。アンデス地域(コロンビア、ペルー、ボリビア)の先住民インディオは、何世紀にもわたって、コカの葉を労働の生産性向上、疲労回復、宗教的儀式、医療などの手段として使ってきた。さらには社交上の絆としても不可欠で、民族の証となっている。
コカの葉およびコカイン・ペースト(コカイン純度40%の半製品)の生産で、ペルーは1990年代半ばまで世界一だった。1914年ハリソン法に始まった米国発の麻薬根絶キャンペーンでは常に国際的に危険な存在として敵視された。その後、61年国連麻薬単一条約で、医療用や科学研究を除くコカの葉の伝統的利用を86年までに廃絶することが明記されたが、履行されていない。それどころか、78年に施行された同国の薬物法では、49年からコカを販売してきた国営コカ企業であるENACO社に合法的な生産・加工・販売を独占的に認めたのだ。同社製のコカ茶には1杯当たり平均4.2mgのコカインが含まれている(図2)。

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