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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
ペルー 薬用植物の文化が色濃く参入企業はTHCもCBDも扱う
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第57回 2022年09月09日
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ペルーにおける大麻草の産業的、医療的、嗜好的な利用は、14~16世紀のインカ帝国時代を含めても歴史的になかったとされている。その後、同国にヘンプを持ち込んだのは、ほかの南米諸国と同じく16世紀に同地を征服したスペインである。スペイン王室は、植民地との海上交通を支える帆船の帆布やロープに使うヘンプ繊維の需要に応えるためにヘンプ栽培を熱心に推進した。しかし、1821年に独立した後も、隣国チリのようにヘンプの産地化(本誌20年8月号参照)には至らず、注目されてこなかった。
その要因の一つに、コカの存在がある。アンデス地域(コロンビア、ペルー、ボリビア)の先住民インディオは、何世紀にもわたって、コカの葉を労働の生産性向上、疲労回復、宗教的儀式、医療などの手段として使ってきた。さらには社交上の絆としても不可欠で、民族の証となっている。
コカの葉およびコカイン・ペースト(コカイン純度40%の半製品)の生産で、ペルーは1990年代半ばまで世界一だった。1914年ハリソン法に始まった米国発の麻薬根絶キャンペーンでは常に国際的に危険な存在として敵視された。その後、61年国連麻薬単一条約で、医療用や科学研究を除くコカの葉の伝統的利用を86年までに廃絶することが明記されたが、履行されていない。それどころか、78年に施行された同国の薬物法では、49年からコカを販売してきた国営コカ企業であるENACO社に合法的な生産・加工・販売を独占的に認めたのだ。同社製のコカ茶には1杯当たり平均4.2mgのコカインが含まれている(図2)。
規制薬物コカの特例規定
ペルーにおける大麻草の産業的、医療的、嗜好的な利用は、14~16世紀のインカ帝国時代を含めても歴史的になかったとされている。その後、同国にヘンプを持ち込んだのは、ほかの南米諸国と同じく16世紀に同地を征服したスペインである。スペイン王室は、植民地との海上交通を支える帆船の帆布やロープに使うヘンプ繊維の需要に応えるためにヘンプ栽培を熱心に推進した。しかし、1821年に独立した後も、隣国チリのようにヘンプの産地化(本誌20年8月号参照)には至らず、注目されてこなかった。
その要因の一つに、コカの存在がある。アンデス地域(コロンビア、ペルー、ボリビア)の先住民インディオは、何世紀にもわたって、コカの葉を労働の生産性向上、疲労回復、宗教的儀式、医療などの手段として使ってきた。さらには社交上の絆としても不可欠で、民族の証となっている。
コカの葉およびコカイン・ペースト(コカイン純度40%の半製品)の生産で、ペルーは1990年代半ばまで世界一だった。1914年ハリソン法に始まった米国発の麻薬根絶キャンペーンでは常に国際的に危険な存在として敵視された。その後、61年国連麻薬単一条約で、医療用や科学研究を除くコカの葉の伝統的利用を86年までに廃絶することが明記されたが、履行されていない。それどころか、78年に施行された同国の薬物法では、49年からコカを販売してきた国営コカ企業であるENACO社に合法的な生産・加工・販売を独占的に認めたのだ。同社製のコカ茶には1杯当たり平均4.2mgのコカインが含まれている(図2)。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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