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世界農業遺産を訪ねて

【石川県】能登の里山里海

棚田の美しい景観がモテている。高米価ではなく、外部経済(多面的機能)への報酬で支えられて棚田が元気だ。また、農協が自らの販売を減らす減農薬、自然栽培を推進している。世界農業遺産認定と共に、能登には新しい風が吹いている。しかし、人口減少は激しい。なぜか。
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1 人と自然が共存する里山里海

能登は祭りが好きだ。能登半島は「祭りの宝庫」といわれる。夏になると「キリコ祭り」が各地で行なわれる。半島は海に囲まれており、“半漁半農”の生活のため、豊漁祈願、豊作祈願の両方があるからであろうか? 海の彼方から来る神様を祀り航海安全祈願もある。とにかく、能登は年中、「祭り」がある。
江戸時代、日本海側は「表日本」だった。北前船の交易によって栄えていた時代である。能登の北前船主たちは、海運業で巨万の富を築き、寄港地は大いに賑わった。蝦夷地(北海道)からの物資を、日本海から関門海峡を経て大坂へ運ぶ西廻り航路が栄え、日本海側に物や情報が集積していたから、「表」と呼ぶに相応しかったのであろう。こうした富が祭りを発展させた。
大陸からも、文化が入ってきた。能登は奈良、平安時代にかけて、中国東北部にあった渤海と交易があった。漆や発酵技術も大陸からの伝来だ。
能登の風土記は、歴史も面白い。北前船や古代中国との交流が今日の能登文化を作っている。日本海に突き出た半島というジオ(大地―地形)の所産だ。
もう一つ特徴的なことは、里山・里海の地域であり、森林、ため池、水田、川、海辺などがつながり、多種多様な生き物が生息している。人々は豊かな自然と共生して暮らしてきた。半漁半農の営みがここにも反映されている。こうした農林水産業を営むことから、農耕儀礼や祭礼という独自の文化が育まれてきた。祭りが多い背景だ。
こうした地域固有の文化や景観、人々の営み、生物多様性が評価され、2011年、国連食糧農業機関(FAO)から「世界農業遺産」(GIAHS)に認定された(国内初認定、佐渡島と同時)。システム名は「能登の里山里海」。認定地域は能登地域4市5町(奥能登の輪島市、珠洲(すず)市、穴水町、能登町、中能登の七尾市、羽咋(はくい)市、志賀町、中能登町、宝達志水(ほうだつしみず)町)、面積1978平方km、人口約18万人(2020国勢調査)。
認定の背景には、2010年、愛知県名古屋市で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」において、「SATOYAMAイニシアティブ」の推進が採択されるなど、近年の「里山」に関する国際社会の関心の高まりがあった。

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