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【本庶佑教授の大発見】
この発見でインスリンが糖尿病の特効薬であることが分かったのだが、インスリンはタンパク質であり、これを化学的に合成して大量の医薬品を作ることは困難だった。そこでウシやブタやクジラの膵臓からインスリンを抽出して治療に使ったのだが、その量は十分ではなかった。さらに、動物のインスリンはヒトインスリンと構造が多少違うため、アレルギーやインスリン抵抗性が起こった。このような問題を解決するために遺伝子組換えを使って、酵母菌や大腸菌にヒトインスリン遺伝子を組込むことでヒトインスリンを作らせることに成功したのだ。
その後のバイオ医薬品の発展は目覚ましく、多くの種類が承認されている。その一つであるヒト抗PD-1抗体「オプジーボ」は2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑京都大学教授が作った難治性のがんに対するバイオ医薬品である。私たちの体内では毎日数千個のがん細胞が生まれているが、免疫細胞がそれらを排除しているのでがんにならない。しかし、もしがん細胞が免疫細胞の攻撃から逃げることができれば、がんが大きくなる。本庶教授が見つけたのは、がん細胞表面のPD-L1という分子が、免疫細胞であるT細胞表面にあるPD-1分子に結合すると、T細胞ががん細胞を攻撃しなくなることだ。そこでPD-1とPD-L1の結合を妨害する働きをする抗PD-1抗体オプジーボが、遺伝子組換えにより作られた。これを悪性黒色腫というがんの患者に投与したところ、T細胞の攻撃力、すなわち免疫が復活してがんを攻撃した。この画期的な治療法は「がん免疫療法」と呼ばれ、ノーベル賞につながった。
このようにかつては夢であった医薬品が遺伝子組換えを使って現実のものになったのだが、問題もある。その一つは、バイオ医薬品の開発と製造に多額の費用がかかるため、薬価が高額なことだ。例えばオプジーボが保険適用された当初は薬剤費が年間3500万円とされ、話題になった。その後1090万円に値下げされたが、それでも高価であることに間違いない。以前に発売され、すでに特許が切れた医薬品については安価な「ジェネリック医薬品」があるのだが、バイオ医薬品分野でもこれに相当する「バイオシミラー」が販売され、医療費の引き下げ効果が期待されている。
現在日本で承認されているバイオ医薬品は多数に上るが※1 、これらを種類別に分けて表2に示す。なお、遺伝子組換えで製造されたバイオ医薬品は、「遺伝子組換え」と表示されている。
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