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新・農業経営者ルポ

被災地・小高区の農業を拓く 若い力と最先端のスマート農業

2011年に起きた東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故で、福島県南相馬市小高区の全住民は市外への避難を余儀なくされた。この地で震災の翌年から営農再開に向けたコメの試験栽培を始め、農業の再生に取り組むのが(株)紅梅夢ファームの佐藤良一だ。若い世代を積極的に雇用し、最先端のスマート農業を駆使しながら営農している。 文・写真/筑波君枝、写真提供/(株)紅梅夢ファーム
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農業は楽しく魅力のある仕事と伝えたい

「若い人でも農業に興味を持ってもらえる会社にしたいです。高齢化社会で若者の農業離れが言われていますけれど、農業は楽しくて魅力のある仕事だよと、多くの人に知ってもらえるような会社にしていけたらいいなと思います」
この会社をどんなふうに成長させたいですかという筆者の質問に、(株)紅梅夢ファームの社員の一人は少し恥ずかしそうに、しかしきっぱりとそう話してくれた。20代半ばの彼は入社3年目。別の農業法人を辞め、就職先を探していたときに「紅梅夢ファームなら最先端の農業ができるよ」と知人に勧められて入社したという。
最先端の農業とは、同社が取り組むスマート農業のことだ。
耕起や整地に使うのはロボットトラクター。水稲は高速汎用播種機を使った乾田直播が中心だ。これには事情があり、営農再開加速化交付金事業を利用して5棟建設予定だった育苗ハウスが、予算の関係で3棟しか建てられなかったことに起因する。苗床を確保できないため、前年に田植えで作付けした圃場をやむを得ず、その翌年から乾田直播に切り替えたというわけだ。この播種機をロボットトラクターで引っ張っている。
一方、田植えも直進キープ機能付き田植え機を使うことで、農業に不慣れな若手でもまっすぐに苗を植えることができる。
水管理は圃場水管理システム「WATARAS」によって、事務所のパソコンから遠隔操作している。防除はGPSと連動したドローンで行い、収穫に使うのは食味・収量測定コンバインだ。圃場ごとに収量と玄米タンパク量のメッシュマップを作成し、そのデータを元に次年度の生産計画を立てることで収量や食味のムラが抑えられる。このデータは同社内のライスセンターとも連携している。
データはすべてクボタの営農管理システム(KSAS)に集約され、それを元に圃場を精密に管理している。GPSのアンテナの整備も行い、原町区の庁舎にアンテナを設置したことで自動運転できる範囲が広がり、精度も向上した。

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