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特集

大麻取締法の75年ぶりの大幅な改正でどうなる?! 日本の産業用ヘンプ

 かつては日本でも幅広く生産され、日用品の原料としても身近な存在であった麻だが、産業用途で用いる「ヘンプ」の取り組みも長い間大麻取締法の厚い壁に阻まれてきた。これまでも本誌では「今から始める大麻栽培」(2012年9月号)、「産業用ヘンプの世界最新動向」(2017年10月号)と特集を企画し、ヘンプの可能性に注目してきたとおりである。世界的な産業用ヘンプの合法化の波が押し寄せ、わが国もようやく大麻取締法の大幅な改正という潮目を迎えようとしている。産業用ヘンプの振興に尽力してきた関係者にとっての感慨はいかばかりだろうか。前編では、ここに至るまでの経緯を整理する。次号の後編では、法改正後の展望について生産・振興・育種等の立場の方々へのインタビューを掲載する。 (まとめ 赤星栄志・加藤祐子)
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Part1 大麻取締法等を改正する背景と 産業用ヘンプに関わる変更点

厚生労働省(以下、厚労省)は2021年に検討会を開催し、翌22年には厚生科学審議会に小委員会を設けて、大麻取締法等の改正を検討してきた。その背景には、(1)国際情勢の変化、(2)国内の大麻事犯の増加、(3)患者団体からの医療ニーズ、(4)麻文化の保護と新しい産業創出の4つの側面がある。
大麻草は、用途別に産業用ヘンプと医療用大麻、嗜好用大麻に分類されるが、日本の大麻取締法はこの分類に適応しておらず、世界の潮流から長らく取り残されてきた。いよいよ日本のヘンプは夜明けを迎えるのか――大麻取締法の改正を巡るさまざまな動きを時系列に追い、産業用ヘンプの国内栽培に関してどのように変更されるのか、その要点をまとめた。

【大麻の調査研究成果が44年ぶりに小冊子に】

大麻取締法が75年ぶりに大幅な改正に至るきっかけは、厚労省の補助金を受けた「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」だった。この調査研究は16~19年まで23名の研究者が参画し、約3000万円が投じられた。研究成果物は5冊、全860ページに及ぶ。
そのなかで一般向けに発行されたのが、小冊子『大麻問題の現状』(全127ページ・図1)である。1976年に発行された小冊子『大麻』(全92ページ)の改訂版に相当するが、実に44年間も情報が更新されていなかったことにただただ驚かされる。
76年版では多くのページを割いていた大麻の沿革、図解付きの大麻草の植物学、法律制定の歴史的経緯が簡潔にまとめられた。現行の大麻取締法でいう「大麻」とは、大麻草(学名=カンナビス・サティバ・エル)の植物体とその製品から、大麻草の成熟した茎とその製品(樹脂を除く)、大麻草の種子とその製品を除いたものだ。薬物として規制対象となっているのは、大麻草の「花穂」と「葉・未成熟の茎」、「成熟した茎から分離した樹脂」、「根」である。
一方の新版で詳しく解説されているのは、大麻草の医療利用の有効性や海外諸国の大麻の取り扱いについての項目である(第II・IV・VI・VII章)。医療用大麻だけでなく、嗜好用大麻や産業用ヘンプについても調査し、掲載したことは画期的だった。76年版ではこれらがわずか3ページの掲載量だったことを思えば、世界的な大麻の規制緩和と医薬研究の進歩の貢献度がいかに大きいかが伝わってくる。

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