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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

タイ(2) 薬用大麻とヘンプ製品でハーブ大国の座を狙う

タイ王国は、世界有数のハーブ製品の生産国・輸出国を目指し、2016年に経済戦略となる「タイハーブ開発に関する国家基本計画」を策定した。ハーブは身体に栄養を与え、病気を治療するための医薬品の代替手段として、米国では3人に1人がハーブを使用し、ドイツではハーブで基礎疾患を治療する事例がある。日本でも漢方生薬として処方されており、国民健康保険の対象である。
しかし、タイでは1万1600 種あるタイハーブのうちの16%しか活用されておらず、輸出用の国際基準を満たしていなかった。そのため、ハーブ製品法(第2562号)を19年に制定し、ハーブ製品の安全性が国際基準を満たすことを保証する法制度を整えた。同法律は、インドのアーユルヴェーダと中国の中薬学を融合したタイ式伝統医療を強力に推進する。そして、政府がコロナ禍で疲弊した経済の立て直しの切り札として注目しているのが、薬用大麻とヘンプ由来のハーブ製品なのだ。

【薬物政策の転換により大麻を麻薬から除外】

同国の麻薬法(97年に施行)では、大麻は第5種麻薬に指定され、取り締まりの対象だった。だが、19年には薬用大麻を合法化し、ヘンプはマリファナの主成分であるTHC濃度が1%未満のものと定義した(本誌19年6月号参照)。
さらに、同国保健省の通知により、22年6月9日からは大麻草(花序、葉、枝、茎、根、種子を含むすべて植物部位)と、THC濃度0.2%以下の大麻抽出物が第5種麻薬リストから外された。この決定を受けて、まず大麻事犯で逮捕され刑務所に収監されていた3219人の受刑者が釈放された。
そして、大麻が麻薬でなくなったことをアピールするために、政府は100万本の大麻草の苗を国民に無料配布した(図1)。それまで許可制だった大麻栽培については、保健省指定の携帯用アプリをダウンロードして登録すれば、商業販売を目的としないことを条件に栽培本数、THC濃度の高低や品種に関係なく、個人的な家庭栽培が可能となった。解禁1カ月後には、栽培アプリの登録者が100万人を超えたという。

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