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【Economic eye】
みどり戦略が農業・農村を変えるか〈下〉
- 評論家 叶芳和
- 第15回 2022年10月31日
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例えば、日本はフェアトレード商品の普及が遅れている。フェアトレードとは開発途上国の産物を適正な価格(再生産価格)で購入することにより、開発途上国の生産者の自立をサポートする貿易の仕組みである。西欧諸国では「フェアトレード」概念が市民の6~7割に普及しているようだが、日本では3割程度と言われる。実際、フェアトレード商品の市場規模は、日本は158億円、ドイツは2374億円である。国民1人当たり年間購入額は日本126円、ドイツは2855円、20倍も高い。
フェアトレードは「エシカル消費」の一つであり、消費を通じて、途上国の人権や経済発展を支援している。日本はその精神が欧米先進国に比べると低い。
さて、農水省の説明によると、「みどり戦略」は地球環境危機対策であり、“持続可能な食糧システム”を創るための改革である。ここでは「5割減農薬」「有機農業比率25%」等は、環境負荷を削減するための手段の一つに過ぎない(ちなみに、日本の温室効果ガス排出量の3.9%は農林業由来。世界は23%)。
新しい農政が「健康・食の安全」を目標にすれば(科学的根拠必要)、市場原理がみどり戦略の成功を導くと思う。消費者の健康志向が一段と強まり、5割減農薬等の農産物は価格が上昇しよう。例えば生産者米価は全国平均1万2000円(玄米60kg当たり)であるが、無農薬の自然栽培米はその3倍、4万円である。価格は上方伸縮的である。農業経営者の行動は“価格の関数”であるから、減農薬米栽培にシフトしていく。
フェアトレードは「エシカル消費」の一つであり、消費を通じて、途上国の人権や経済発展を支援している。日本はその精神が欧米先進国に比べると低い。
さて、農水省の説明によると、「みどり戦略」は地球環境危機対策であり、“持続可能な食糧システム”を創るための改革である。ここでは「5割減農薬」「有機農業比率25%」等は、環境負荷を削減するための手段の一つに過ぎない(ちなみに、日本の温室効果ガス排出量の3.9%は農林業由来。世界は23%)。
新しい農政が「健康・食の安全」を目標にすれば(科学的根拠必要)、市場原理がみどり戦略の成功を導くと思う。消費者の健康志向が一段と強まり、5割減農薬等の農産物は価格が上昇しよう。例えば生産者米価は全国平均1万2000円(玄米60kg当たり)であるが、無農薬の自然栽培米はその3倍、4万円である。価格は上方伸縮的である。農業経営者の行動は“価格の関数”であるから、減農薬米栽培にシフトしていく。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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