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昭和38年といえば1963年であり、僕は当時中学3年で東京オリンピック開催の前年だった。日本は60年代初頭から始まる高度経済成長の真っ只中で、公害や成長期の産業転換による労働争議などもあったものの、日本社会は確実に豊かになっていった。家庭電化製品の普及による家事労働や農業を含む各種産業での機械化の進展など労働環境も改善された。さらに、僕の小学生時代には少なからぬ日本人はお腹に寄生虫を宿しており、マッチ箱にウンコを詰めて学校に持っていき、虫がいると見なされた生徒は虫下し(駆虫薬)を渡された。戦後まもなく結核は死病ではなくなり、小児麻痺といわれたポリオ、赤痢、日本脳炎、その他様々な病気も予防接種の普及や医療技術の進歩によってほとんど耳にすることがなくなった。僕の母は腎臓疾患で亡くなったが、今であれば人工透析を受けられたはずだ。医療体制そのものが改善された。かつては死亡宣告と同様だったガンも今では驚くほどの治癒率になっている。さらには、遺伝子組換え技術による様々な薬や治療法の開発により、多くの難病も治療が可能になっている。上下水道をはじめとする環境インフラの整備も日本人の寿命を延ばす要因なのだろう。
これほどに日本人が長生きするようになったにもかかわらず、あいかわらず農薬や遺伝子組換え技術の危険性を語り、人々に不安をまき散らす人々がいる。彼らは百歳を超える高齢者人口の数字をどう評価するのだろう。
高齢化社会で世界のトップを走る日本。圧倒的な人口比率を誇る僕自身を含めた団塊の世代もこれまでと同様に百歳高齢者表彰を受けさせてもらえるかはやや不安を残すところである。邪魔にされぬよう、若者の活躍を支援する取り組みを心がけたい。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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