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新・農業経営者ルポ

すべては地域のために。地域と人をつなぎ続ける農業経営

集落営農組織としてスタートし、兵庫県内の農業法人で初の株式会社となった(株)ささ営農。コメ、大豆、麦を主力に生産する一方で、契約栽培でバジルを手掛け、たつの市を国内有数の産地に成長させた。6次産業化にも取り組み、バジルの加工工場を建設して新たな雇用創出にもつなげている。代表取締役の八木正邦の思いは一つ。“すべては地域のため”だ。農業を核にして地域を維持しながら、収益の上がる経営を目指し、常に新しいチャレンジを続けてきた。 文・写真/筑波君枝、写真提供/(株)ささ営農
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女性部会の新たな仕事としてバジル栽培に着手

兵庫県産バジルの生産量(生葉)は、2014年の38.8tから2022年には54.9tに増加しており、国内では大分県に次ぐ産地といわれる。その大半がたつの市とその周辺で栽培され、それをけん引してきたのが、八木正邦が率いる(株)ささ営農だ。営農組合だった2004年から神戸市の調理食品専業メーカー、エム・シーシー食品(株)(以下、エム・シーシー)と契約を結び、バジル栽培に取り組んできた。
エム・シーシーは、輸入のバジルペーストを使用してソースを製造していたが、国産の、できれば兵庫県産のバジルでソースを作るための契約先を探していた。その話を耳にして手を挙げたのがささ営農だ。八木はこう話す。
「バジルって何?と思ったくらい知識もなく、栽培方法も全く知りませんでした。ただ、営農組合に40名ほどが所属する女性部会があり、工房で巻きずしや餅、菓子などを作っていました。収穫を手摘みで行うと聞き、女性たちの新しい仕事になればと思い、名乗りを上げたんです」
バジルは香りが命だ。施設と露地では香りが全く違うため、栽培はすべて露地で行わなければならない。早朝に手摘みで収穫し、洗浄後、その日のうちにエム・シーシーに出荷するなど、決まり事も多かった。最盛期は10aで300kgくらいの生葉を収穫しなければならず、この収穫作業に人手を要した。県内でほかの産地も手を挙げたが、手摘みの人手を確保するのが難しく、断念したという。
「女性部会を中心に地域全体で栽培に取り組みました。摘みながら自然とコミュニケーションが取れ、地域のつながりの輪が強まったのが良かったです。皆で取り組めるような仕事の機会を作っていくことは、地域づくりに大切なことだと実感しました」
この“地域づくり”こそが、ささ営農が設立された大きな目的であり、今もそのためにさまざまな事業を行っている。

圃場整備は地域を整備する事業

ささ営農は揖保川の東岸、たつの市新宮町笹野地区に位置する。播磨灘に流れ込む播磨五川の一つに数えられる揖保川だが、揖保乃糸素麺の地といったほうがわかりやすいかもしれない。かつては農家の副業としても、素麺づくりが行われていたという。

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