ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

2023年始動! わたしの「仕事」「展望」「視点」前編

インフレ下で新しい年が明けた。 国際情勢の荒波を受け、日本農業の構造的問題が重くのしかかる。 資材高騰、食料安全保障、自給率、人手不足……。 そんななかで、それぞれの仕事の現場から、 2023年に寄せる思いを語っていただいた。
.

過去最悪の酪農危機のなかで生き残りのシナリオ 上野 裕 茨城県 酪農経営

上野 裕
搾乳牛31頭、育成牛6頭、閉鎖牛群、和牛繁殖牛12頭。18ha中6haを夏季放牧利用、12haから採草した粗飼料とコントラクターからの購入で国産化は達成。草由来の栄養素を意識しバランスしながら成田市の小泉輝夫氏の子実コーンを利用。エコフィードも利用しながら海外穀物への依存度を現状可能な限り低下させ備えている。県内3戸の農家と共に「茨城SRU」を通じて土壌を学び、質の高い粗飼料生産に繋げられるよう勉強中。後継者あり。54歳。

【デリケートなバランスの上に成り立つ酪農産業】

主たる生産物である生乳は腐りやすい液体であることから、乳等省令という厚生省省令の下、厳格な流通加工運搬販売の規定があり、食管法下のコメと同等かそれ以上の統制管理が現在もされている食品原料です。
牛は生産年齢に至るまで2年を要し、それまでもそれ以降も常に飼料という経費を掛け続けなければなりません。また泌乳が始まれば人の都合で止めることもできず、365日の高度な管理を必要とします。
販売品目は生乳と副産物である子牛と老廃牛ですが、近年の高コスト化により生乳の売り上げに占める経費が増大しつづけているため、子牛販売に依存度が上昇する状態になっていました。また、機械投資して作る飼料は、自らの家畜に与えるための自給飼料で販売目的ではありません。
生産物の性質上、保存が利かず広域流通が難しく、かつ食品衛生上の規制が厳しいこと。直接売り上げに反映されない飼料の生産に多額の投資・労力が必要なこと。規模拡大が進み飼料・資材の外部化を進め高効率化を追求した結果、外部要因により脆弱化している現実。需給調整が難しく販売チャンネルが少ないため、大口需要者有利になりやすい等、複雑かつデリケートなバランスの上に成り立っている産業とお分かりいただければと思います。

【「コモディティの雄」という地位から降りるとき】

一部地域では酪農バブルに浮かれた状況下、コロナが発生。国策で拡大しつづけた生産基盤と、さらなる増頭計画の途中にある農場からの供給は止まらず、緊急避難的にバター、脱脂粉乳の工場をフル操業したものの、当然その需要があるわけでもなく、倉庫に積みあがった在庫は史上最高量となり、むしろ逼迫(ひっぱく)傾向に入った海外製品よりも安くなるという笑えない状態に陥ります(国際流通する乳製品も実は逼迫傾向にあり価格も上昇傾向にあります)。

関連記事

powered by weblio