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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

フィジー 環境対応とコロナ禍がヘンプの合法化を促進

フィジー共和国は、300以上の火山島と珊瑚礁からなる南太平洋の島国である。国土の総面積は日本の四国と同じくらいで、西にバヌアツ、ニューカレドニア、東にトンガ、ニウエ、サモア、北にツバルがある。
人口約86万人を有し、民族的には先住民であるフィジー系が57%、インド系が38%、その他が5%を占める。南半球の熱帯海洋性気候で、7~8月の最も涼しい乾季でさえ気温は18~28℃あり、雨季の1~2月でも23~31℃という常夏の国である。国民的スポーツとしてラグビーの人気が高い。

観光業の代替としてヘンプのCBDに注目

1874年に英国の植民地になったが、英国はサトウキビ農業を推進するために、1879年より同じく英国の植民地だったインドから大勢の労働者を年季奉公制度の下でフィジーに入植させた。インド大麻(薬用型)はそのインド人労働者によってフィジーに持ち込まれたと言われている。その後、ほかの英国植民地と同様に、同国はインド大麻の輸入を禁止した。インドからの移民政策は1920年頃で廃止されたが、フィジーに定住したインド人も多く、サトウキビは同国で主要な農産物になり、砂糖の輸出が同国の経済発展を支えた。
しかし、70年に英国から独立して以降、製糖工場の老朽化や土地借地契約の問題、砂糖価格の低迷などからサトウキビも砂糖も生産量が下降の一途をたどっている。サトウキビ農業の代わりに、ヤシの木が生い茂るビーチ、透き通ったラグーンのあるサンゴ礁という南国イメージを武器に、力を入れてきたのが観光業である。同国のGDPの40%を稼ぐまでに成長した観光業だが、2020年のコロナ禍で壊滅的なダメージを受けた。
そこで、観光業に頼らず、自国で産業化できることを検討し始めたのだ。司法長官兼経済大臣のアイヤズ・サイード・カイユム氏は、21~22年に研究予算をつけて、群島全体で、ヘンプ農業の開発に着手したことを表明した。
同国には、オセアニア地域の伝統的飲料である「カヴァ(Cava)」(図1)を商品化してきた成功体験がある。カヴァとはコショウ科の灌木の根を砕き、成分を絞り出して作られる飲み物で、鎮静作用がある。不安症に対するカヴァの有用性は研究されているが、重度の肝疾患を引き起こす恐れがあり、輸入禁止を謳う国もある。一方で、ヘンプから抽出されるCBD(カンナビジオール)は抗炎症等の機能性を持つ化学成分として世界的に普及しつつあることから、CBD製品の商品化に期待しているのだ。

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