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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

カザフスタン 綿花の代替としてのヘンプの挑戦

カザフスタン共和国は、ユーラシア大陸の中央部に位置する広大な内陸国で、北をロシア、南を中央アジア諸国、東を中国、西をカスピ海と接する(図1)。国土面積は旧ソビエト連邦(ソ連)の国々のなかでもロシアに次ぐ広さで、日本の約7倍あり、その大半は乾燥した平原や低地だ。100以上の民族が暮らす多民族国家で、人口は1920万人を有し、その7割がイスラム教を信仰している。
資源豊富な同国では、農業の経済的貢献は1割に満たない。国土の7割以上が農耕地だが、永久牧草地が多く、作物生産としては北部では穀物生産が、南部では灌漑農業が盛んで、小麦や綿花が輸出品目になっている。

チュイ渓谷は世界最大の野生大麻の群生地

ヘンプの原産地はカザフスタンのある中央アジアだと言われている。現在も、カザフスタン南部とキルギス北部にまたがるチュイ渓谷には、世界最大の大麻草の群生地がある。この渓谷は日本の関東地方とほぼ同じ広さで、その8分の1に相当する約40万haに大麻草が自生しているのだ(2006年の国連世界薬物報告書による推定値)。
ヘンプの学名「Cannabis sativaL.」の“Cannabis”は、スキタイ語をギリシャ語に訳した「管(くだ)」に由来する。スキタイ人とは、紀元前7~紀元1世紀頃に黒海北岸の南ロシア草原を中心としたユーラシア内陸で活動した遊牧騎馬民族のことだ。古代ギリシャの歴史家であるヘロドトスによれば、そのスキタイ人が衣服を作るための繊維植物として、あるいは儀式で大麻草を使用していたという。また、考古学的には、モンゴルの西アルタイ地域(現在のカザフスタンのすぐ北)にある紀元前300年頃のスキタイ人の墓所からは、焦げた大麻草の種子が多数発見されている。
その後、スキタイ人の子孫である中世カザフ人や同地域に根づいた各部族は、ヘンプ繊維で織物やロープを作った。記録や証拠は残されていないものの、古代シルクロードのルート上にあることから、同国にも大麻草を薬用または嗜好用で商取引してきた長い歴史があったと考えられている。

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