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新・農業経営者ルポ

夢は笑顔あふれるイチゴのファンタジーワールド

富士山の麓でイチゴ栽培を手がけてきた祖父と父の後継として、21歳で就農した。順調に続けていたが、価格が急落したことを機に地元の農協から脱退する。農協や市場に頼らないと決め、直売所を作り、自分の力で売るために奔走してきた。物を売るとはどういうことか、学びと経験を重ねながら売上を伸ばし、2015年には株式会社化も果たした。直売所をテーマパークのようなコンセプトで設計し、訪れた人たちが笑顔で楽しめるイチゴのファンタジーワールドを創ることを目指す佐野真史に迫った。 文・写真/筑波君枝、写真/富丘佐野農園(株)
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富士宮でのイチゴ栽培の先駆者だった祖父

自社製イチゴの直売所である「れっどぱーる」の園内には1日中、ディズニー音楽が流れている。カントリー風のデッキを設けた直売所の隣にはカフェスペースが広がる。通路にはイチゴのキャラクターが描かれた真っ赤なフラッグがはためき、テーマパークのようにデザインされた場所であることがわかる。
取材したのは真冬の平日の午後だったが、それでも人の流れは途切れず、買い物をしたり、カフェでくつろいだり、写真を撮って笑いあったりする姿が見られた。ここが地元のお楽しみスポットの一つになっていることがうかがえた。区画整理がされていないため、規模拡大がしにくいそうだが、少し奥まった場所が周辺とは異なる雰囲気づくりに一役買っているようだった。
2008年に直売所を開いて15年。農協や市場には頼らず、自分で売っていく。佐野真史はそう決意し、試行錯誤を繰り返しながら道を切り開いてきた。決して順調な歩みではなかったというが、いまでは社員6名を雇用し、売上は年間8500万円に達している。
「農業しか知らなかった私が、学びながら、経験しながら、ここまで来ました。イチゴが私たちをここまで連れてきてくれました」
佐野が率いる富丘佐野農園(株)では、「紅ほっぺ」のハウス栽培を50a、地元特産の四つ溝柿(注:脱渋用)の露地栽培を30a、育苗ハウスが7aある。直売所の運営やハウスでのいちご摘み(イチゴ狩り)に加え、チェーンスーパー2社と取引している。イチゴ狩りシーズンである12~5月の休日には、多い日で200~300人が訪れるという。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で人数制限を実施しているが、ホームページ上のカレンダーを見ると休日の予約は盛況だ。遠方から来る人よりも地元客が多いそうだ。

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