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土門「辛」聞

産地間競争をリードする半島農業 その強さをもたらしたテロワール


渥美半島の農業をめぐる今日的状況をお伝えしておこう。田原市農業委員会が公表した農地の賃貸料情報から畑の部分だけを抜き取り整理したものである(表参照)。
田原市平均で比較すると、普通畑が値下がりしているのに対し、ハウス敷地は大幅に値上がりしている。インフレで諸資材が高騰し、なおかつ先行き不透明でもあるので、ハウスの新設を見送り、ハウス付き物件にニーズが集まったということだ。地域的には、トヨタ自動車の工場がある田原地域だけが逆に大きく値下がりしている。渥美半島でも、この地域は高齢化や後継者不足による農地の遊休地化が問題になっている。農地が賃貸に出されても借り手が少ない。それが賃貸料に反映されている。その一方で、伊良湖岬に近い渥美地域や、太平洋側の赤羽根地域は、規模拡大による農地のニーズが高いことを示している。
房総半島の農業用水が利根川なら、渥美半島は、豊川と天竜川から取水する豊川用水だ。干ばつの被害から渥美半島の農業を救い、半島農業の西のエースに押し上げたのだ。

大隅半島 国内露地野菜最後の砦

鹿児島のランドマークは、桜島。それを二つの半島が手で包むような地形の鹿児島だが、その半島名を答えられる方は少ない。西側は薩摩半島で、東側が大隅半島だ。大隅半島は、国内露地野菜にとって最後の砦だ。ここを突破されたら、次は中国・山東半島ということになる。
そもそも、大隅半島は農業に不向きの地だった。大昔の火山噴火の堆積物「シラス」に覆われていることだ。火山ガラスが主成分のやせた土地に、地下水位が極めて低く、保水力が乏しく、干害の被害を受けやすい。サツマイモが特産なのは、乾燥に強く無肥料でも育ち、根菜なので台風被害も受けにくいからだ。
サツマイモ畑が目立った半島で、キャベツやハクサイなど葉菜類の生産が可能になるのは、高度成長期に国によって大規模な灌漑事業が実施されたからだ。
大隅半島が、房総半島や渥美半島と違う点がある。露地野菜で100ha規模の生産組織がいくつもあり、それを原料にする加工会社が多いことだ。3大都市圏から遠く離れていることから、産地加工というビジネス形態が定着したようだ。
大隅半島が、国内露地野菜にとって最後の砦という証(あかし)を示しておきたい。半島でもっとも農業が盛んな東串良町。経営面積が50~60ha規模の露地野菜を専門にした農業法人が3社もある。加工用だけでなくスーパーやコンビニ向け生食も含めての露地野菜産地だ。町がまとめた「農作業の標準賃金」と題した資料には、農地の「標準賃貸料情報」のほかに、「請負作業賃金」と「農作業日雇賃金」の情報も記載されていた。

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