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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

モロッコ かつての世界最大の違法大麻産地が医療・産業・化粧品分野で合法化


ところが、1870年代~90年代頃にアフリカ諸国を統治した各地の植民地政府は、労働力の確保や質の低下に影響すると考えて大麻を積極的に規制した。大麻の使用は不道徳なものとみなされ、大麻栽培にも汚名が着せられたのである。1925年に第二あへん条約で世界的に大麻規制が行なわれた頃には、アフリカ各地の植民地政府はすでに大麻禁止政策を採用していた。
こうした動きのなか、唯一の例外国が、モロッコである。緩い規制のもとで、フランス資本の多国籍企業がタバコとキフの取引で独占権を得ており、当時、欧州に流通していた合法的な大麻チンキなどの大麻由来の医薬品のほとんどはモロッコ産だった。
その後、植民地支配から独立したアフリカ諸国の多くは、1961年麻薬単一条約の制定後も大麻禁止の政策を変えなかった。1956年に独立したモロッコも同条約を遵守することを選択し、大麻禁止政策が旧フランス領と旧スペイン領の全土に拡大した。しかし、初代国王のモハメッド5世は、大麻栽培の禁止などを理由にリーフ地方で起きた反乱を鎮圧した後、伝統的な栽培地での大麻栽培を一部容認することを決めたのだ。
同国には、植民地経済で大麻由来医薬品等が重要な輸出品だった歴史があり、独自に大麻栽培を容認する例外措置を取った結果、1980年代から2010年代までの世界最大の違法な大麻産地を醸成することになった(図1)。

合法化のきっかけは国連WHO勧告の投票

同国では、もともとマリファナの主成分であるTHC濃度が3~5%の品種を天水のみの自然な栽培法で栽培していた。だが、アフガニスタン系の新たな品種の大麻種子が大量に持ち込まれ、栽培・加工して精製された大麻樹脂はTHC濃度がとても高く15%を超えていた。
03年の国連薬物犯罪事務所(UNODC)の調査によると、同国は大麻樹脂の世界第一位の生産国であり、13万4000haの栽培地が存在し、年間3000t以上が欧州に違法に輸出されていたという。その後、国連からの強い要請により、モロッコ政府は大麻撲滅のために取り締まりを徹底し、大麻畑の償却処分などを大規模に実施してきた。その結果、2020年には5万5000haにまで栽培地は減少した。
同国内では長年にわたり、大麻合法化の議論があったが、欧州との外交関係の悪化を避けたい意図でなかなか進まなかった。一石を投じたのは、2019年に国連麻薬委員会(CND)が発表した麻薬単一条約の附表IVから「大麻/大麻樹脂」を削除する項目を含むWHO勧告だった。翌年に行なわれた採択の場で、モロッコは「賛成」を投じ、その意思を表明した。投票権のある53カ国のうち、賛成27カ国、反対25カ国、棄権1カ国で可決され、大麻の医療的価値が国際的に認められることとなった。ちなみに、北アフリカで投票権を持つエジプト、リビア、アルジェリアは反対票を投じた。

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