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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
モロッコ かつての世界最大の違法大麻産地が医療・産業・化粧品分野で合法化
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第65回 2023年05月09日
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モロッコは、WHO勧告の採択を受けて、21年6月16日に「大麻生産・加工・販売に関する法律案13-21」を可決した。合法化されたのは、医療・産業・化粧品分野で、大麻栽培が盛んなリーフ地方にある6つの州に限定されている。なお、ヘンプのTHC濃度基準は1.0%以下とした。
法改正の最大の目的は、貧しい農民を違法なカルテルや密輸業者から解放することだった。医療目的で生産された大麻草の1ha当たりの収益は年間11万モロッコディルハム(約140万円)になると内務省は推定し、従来の違法な取引価格よりも46%高く、合法化の意義を強調している。
モロッコ政府は、管理体制を整えるために「大麻規制庁(ANRAC)」を設置した。22年10月に医療目的あるいは研究目的で交付した免許は10件、免許期間は10年間と長期に設定されている。ただし、同国では、嗜好用大麻の生産と販売は、違法のままである。
時代を先取りしたヘンプハウスの提案
同国の産業用ヘンプの取り組みを最後に紹介する。
ドイツ出身の建築家、モニカ・ブリュマー氏は、モロッコの貧しい山岳地帯の農村開発と持続可能な雇用のための活動に取り組んでいる。野生の大麻草の茎の使用を促進する目的で17年に協同組合「Adrar Nouh」を立ち上げた。そこでモロッコの大学生と共同で製作したのが、太陽光パネルとヘンプを含む地元の材料を壁材に用いたエコ住宅「Sunimplant」だ。電源を必要としない完全オフグリッド住宅であることが評価され、20年の欧州産業用ヘンプ協会(EIHA)の国際会議で開催されたコンペで優秀賞に輝いた(図2)。国際建築コンペ用に製作された前衛的な作品だったが、その後の合法化を受けて、リーフ地方で新たなヘンプハウスの建築にも着手している。
公然たる違法ビジネスから合法ビジネスに切り替えていけるかどうか、国際的に注目される国の1つである。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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