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特集

政府・自治体広報の危うさをファクトチェック


ではなぜ、かくも巨額な予算が計上されたのか。コロナ禍という未知のリスクに過剰に反応したからだと私は見る。ワクチン接種費用(海外の製品を購入)だけでも軽く1兆円を超えた。もし、ワクチン接種の効果がそれほど高くなかったとしたら、何のための1兆円かが問われるところだが、そういうまっとうな疑問さえも起きなかった。
現に、新型コロナウイルスが弱毒化したあとの3回目以降のワクチン接種は無駄だったと指摘する学者もいる。問題なのは、これだけの巨費を投じながら、費用対効果を検証する学者集団がいないことだ。
政府の政策がすべて正しいとは限らない。たとえば、ある特定の農薬や食品添加物がどこまで安全かを審議する厚生労働省や食品安全委員会などの検証自体(リスク評価や規格基準の策定など)は専門家の審議過程が公開され、過去からの学術的蓄積もあり、信頼度は高いと言える。ところが、過去にあまり経験のない大テーマに直面すると、政府の広報や政策がはたしてどこまで的確なのかは怪しくなる。しかも、その問題点を見抜くのは相当に難しい。

【唐突に登場した農水省の「みどりの戦略」】

そのよい例が、2021年5月に策定され、2022年7月に施行された農水省の「みどりの食料システム戦略」(法律は「みどりの食料システム法」)だ。この公表はいかにも唐突に出てきた印象をもつ。
その主な狙いは2050年までに、農地に占める有機農業の面積を現在の1%以下から25%(面積で100万ヘクタール)に拡大するというものだ。
実を言えば、有機農業を推進する法律はとっくに存在していた。2007年に施行された「有機農業推進法」(議員立法)である。2018年までに有機農業の面積を倍増させて1%にする目標だったが、まったく実現されなかった。新しい目標はなんと25%だ。どう見ても夢物語のようなシナリオに見える。
なぜ、こんな現実的とは思えない構想が登場したのだろうか。菅義偉総理(当時)は2021年9月、国連食料システムサミットでみどりの戦略を世界に向けて披露した。明らかに世界的な“脱炭素”の流れに遅れまいと焦っているかのように見えた。
その菅総理は前年の2020年10月の所信表明演説で「2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする」との野心的な目標を表明した。
これも唐突に思えた。これまで政府は「2050年までに80%削減」と言っていた。明らかに世界的な脱炭素の流れに追随する焦りのようなものが感じられた。

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