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特集

政府・自治体広報の危うさをファクトチェック



【日本の「みどりの戦略」はEUとそっくり】

みどりの戦略も、「世界の流れに遅れてはいけない」という西欧追随のあとがうかがえる。なぜなら、EU(欧州連合)が2020年に打ち出した「農場から食卓まで」という戦略と中身がそっくりだからだ。
EUは2030年までに農地の25%を有機農業にし、化学農薬のリスクを50%削減、化学肥料の使用量を20%削減するという目標を掲げた。日本の有機農業の拡大目標はこのEUと同じ数値だ。気候風土や農業構造が全く異なる西欧と日本で、なぜ有機農業の目標値が同じ数字になるのか不思議でしようがない。
EUはすでに2020年時点で農地の約9%が有機になっている。それをさらに拡大させようとするわけだ。EU最大の農業生産者団体の欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会は同戦略に基本的に賛意しつつも、生産性や競争力の低下に懸念を示しているという(「誰が農業を殺すのか」窪田新之助、山口亮子著参照)。
少し考えてみれば分かるが、有機農産物の価値はその生産量や流通量が少ないからこそ、希少価値がある。多少価格が高くても、高所得層を中心に売れる。しかし、農地の4分の1が有機農業になれば、有機農産物は市場にどっとあふれる。
そうなれば、有機農産物の産地間で価格競争が起き、価格は安く抑えられるだろう。その結果、生産者の手取り収入が減ることも予想される。すべては脱炭素のためである。

【慣行農業のイメージを貶める紙芝居】

脱炭素信仰から、滑稽な紙芝居まで現れた。農水省東海農政局がつくった「2しゅるいのにんじん」という子供向け紙芝居だ。物語は、形がいびつで小さくても、地球環境のことを考えた有機のにんじんを選ぼうという締めで終わる。
有機栽培だとニンジンの形が悪く、小さくなると思わせるような初歩的な誤りの見られる内容なのだが、悲しいのは食料安全保障に貢献している従来型の慣行農業を否定的に伝えている点だ。農薬や化学肥料の適正使用は日本や世界の豊かな食料を支えているのに、なぜ、こんな幼稚な内容になるのか不思議である。それもこれもカーボンニュートラル(脱炭素)という西欧起源の絶対的信仰に帰依しているからだ。
みどりの戦略では、AIやドローンなどを駆使した最新のテクノロジーやゲノム編集技術などを応用して、環境負荷の少ない脱炭素農業を推進する計画だ。それ自体に異論はないが、有機農業との両立をあまりにも楽観視している感じがする。

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